「安心安全の東京五輪」に暗雲です。東京五輪に出場するウガンダ選手団9人のうち1人が、成田空港で新型コロナウイルスの陽性と判明していましたが、合宿先でさらに1人の陽性が判明しました!
菅義偉首相が誇る「日本の水際対策」に不安が広がるなか、海外メディアはさっそく「東京五輪に抜け穴」と報じています。開催まであと1か月。「安心安全な大会」は可能なのでしょうか?
感染拡大中のウガンダから、さらに18人が来日!
一人目の陽性判明は、ウガンダ選手団に帯同してきたコーチでした。報道によると、ウガンダ選手団はアストラゼネカ製のワクチンを2回接種済みで、出国前72時間以内の検査を受けて、陰性証明書も提出していたとのこと。
二人目は、「濃厚接触者」と認定された残り8人のうち20代の選手が、事前合宿先の大阪府泉佐野市で受けたPCR検査で陽性が判明。ルールに従って「カンペキな事前対策」をしていたとされる選手団の感染に、衝撃が広がっています。
Second COVID-19 Case In Uganda Team
(ウガンダ選手団で二人目のコロナ陽性:AFP通信)
AFP通信によると、空港で陽性が判明したコーチ以外の選手8人と、選手団に帯同していた泉佐野市の職員は空港では隔離されず、そのまま泉佐野市に直行。入国から3日目に実施したPCR検査で一人の陽性が確認されたとのことです。
海外五輪代表チームの入国は、オーストラリアのソフトボールチームに続いてまだ2国目にすぎません。事例が少ないとはいえ、本国出国時と日本入国時に受けたPCR検査で陰性でも、その後の検査で陽性になることは「想定外」だったのでしょうか?
さらに、ウガンダ本国のメディアによると、今回来日した9人は、「the first batch of the 27 athletes to represent Uganda」(ウガンダ代表チーム27人の最初の一団)とのこと。コロナ感染が拡大してロックダウン中のウガンダから、残りの18人の入国を認めるのでしょうか?
9人の選手団を送り出す際、ウガンダのスポーツ大臣が「ウガンダの良き外交官として才能を発揮し、国旗を高く掲げてくれ」と激励したそうです。本来の狙いとは違う形ですが、ウガンダに世界からの注目を集めたという点では、「外交」の役割を果たしたかもしれません。
コロナ封じ込め策の「抜け穴」を暴露した?
今回のウガンダ選手団のコロナ陽性判明は、これから選手団の派遣を予定している各国に衝撃を与えているようです。米紙ウオールストリート・ジャーナルは「東京五輪のプロトコルに意義を申し立てた」と、速報で報じました。
Positive Tests in Uganda Olympic Delegation Challenge Protocols for Tokyo Games(ウガンダ五輪選手団のコロナ陽性判明は、東京五輪のプロトコルに意義を申し立てた)
「challenge」(チャレンジ)は、動詞で「意義を申し立てる」「盾突く」「正当性を疑う」といった意味で使われます。記事では、今回のウガンダ選手団の陽性判明が、「revealing potential holes in plans to contain the virus during the Games」(大会中のコロナ封じ込め計画の潜在的な抜け穴をあらわにした)と、伝えています。
東京五輪の「水際対策」では、出国前PCR検査の陰性証明が「メイン施策」であるものの、潜伏期間が2日から2週間のため、ウガンダ選手団のように「今後も飛行機に搭乗前は陰性でも入国後に陽性になる可能性は多いにある」と指摘。
機内での感染リスクや、さらに、事前合宿地を経ずに選手村に直行する「開幕直前入国組」のリスクを懸念しています。「200を超える国からのアスリートが密集する選手村。とりわけ食堂など屋内での密集状態でどうなるのか」との指摘に、思わず背筋が寒くなってしまいました。
それでは「今週のニュースな英語」は、米ウオールストリート・ジャーナルの記事から「challenge」(チャレンジ)を使った表現を取り上げます。動詞で使うと「意義を申し立てる」といった意味になります。
Please challenge anything in my report
(私の報告書に意義を申し立ててください=悪い点を批判して下さい)
I challenged your statement
(あなたの発言を疑わしいと思った)
I challenged you about the fairness of your statement
(あなたの発言が公平かどうか疑わしいと思った)
アフリカの小国ウガンダが「challenge」した東京五輪の「水際対策」。「安心安全な大会の開催」を国際的に約束した菅首相はどう対応するのでしょうか? 開幕までカウントダウンが進むなか、世界中の注目が集まっています。(井津川倫子)