今週(2021年6月14日週)は、クロス円の下落が明暗を分けた。きっかけは、米国のFOMC(連邦公開市場委員会)。市場の予想より早めの利上げが示唆されたことで、株価下落に長期金利の上昇を招いた。学生トレーダーは、その対応に追われた。
早稲田大学のNAKAMURAさんは、米ドル円で下げたところを狙って「買い」でエントリー。短期決済でしっかり利益を確保。明治大学の佐野快斗さんは、英ポンド円のショート(売り)に成功。利益を確保したのも束の間、翌日にはしっぺ返しを食らって利益を減らすなど、出入りが激しかったものの、なんとかプラスを確保した。
米FOMCの動きに注目して分析を重ねてきた慶応義塾大学の2Gさんは様子見。同志社大学のFOXも、多忙のため取引を見送ったが、ニュースとチャートのチェックは怠らない。
一方、一橋大学のボンゴレさんは前週のプラスが吹き飛ぶことに。クロス円の大きな下落に対応しきれず、「FOMCの結果がわかった後に、米ドルと他の通貨ペアの動きを一緒に見ていれば......」と唇を噛んだ。
米ドル円を短期決済で利益確保(早稲田大学 NAKAMURAさん)
FX大学対抗戦をご覧のみなさま、こんにちは。早稲田大学3年のNAKAMURAです。
まずは、今週(2021年6月14日週)の結果報告です。今週は、6月16日21時30分に住宅着工件数、建設許可件数、輸入物価指数が発表された後に米ドル円が下降。反発後、さらに下降するのを狙いエントリーしました=下図は、左がドル円の1分足チャート図、右が3分足チャート図。
1分足でボリンジャーバンドのプラス2σ(シグマ)にタッチしたところで30万通貨をエントリー(赤矢印)、マイナス2σにタッチしたところで短期決済し、結果として930円の利益になりました(全体で100万930円)。
もともとは、この後も短期トレードを数回行いつつ、17日3時からの相場を見て波に乗れるところは乗ろうと思っていたのですが、個人的な事情でチャートを見ていられなかったので、控えました。
その後、3時に今週一の目玉、FOMC(米連邦公開市場委員会)の政策金利と声明発表、FRB(米連邦準備制度理事会)の経済・金利見通し発表、3時30分にパウエルFRB議長の記者会見がありました。下図は30分足チャート図のドル円相場です。
結果として、1ドル=109.86円から110.70円近くまで上昇しました。
FOMCで予想より早い利上げが示唆された(2023年の政策金利につき、3月時点の従来見通し ゼロ金利:11人 利上げ7人→ゼロ金利:5人 利上げ:13人)結果、一時、世界的に同時株安となり、米10年国債は発表、会見を通して一時1.48%から1.58%近くまで上昇しました。
パウエル議長の発言の要点としては、経済再開は前例のないもので、インフレは一時的なものであるとする姿勢(コアPCE見通しを2021年のみ大きく引き上げ)を崩さずに2023年の利上げを前提としつつ、経済状況が前進すればテーパリング(量的緩和の縮小)を検討すると示しています(日本経済新聞 米ニューヨーク駐在記者の後藤竜也氏6月17日 4時48分のツイート参照)。
今年2月には米5年債金利が上昇していましたが、2年債に変化は見られませんでした。一方、今回のFOMCによって2年債は急上昇しています。市場が2022年、23年の利上げを意識しているとみられます。米国債(3か月?30年)のいわゆる「イールドカーブ」は今年初めと比べ、傾斜がゆるやかになってきています。
児山さんからいただいたアドバイスにもありました、金融相場(低金利かつ株高)から業績相場(金利上昇かつ株高)への移行との関連など、次週以降分析していきたいと思います。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
FOMC(米連邦公開市場委員会)では、インフレ見通しと2023年の利上げの確認ができた内容といえます。
値動きを見ると、ドルストレードをみるとドル高に見えます。しかし、ドル円を見ると円安に振れた後に2日掛けて全戻してます。この値動きをみると、アナリストは東京オリンピックの内容が進展したとか、ドル高ではなくユーロ安などさまざまな意見が出ており、解せない値動きだったようです。
しかし、これまで「利上げを考えることすら、考えたことない」とハト派だったパウエル議長が「雇用は十分に強い。テーパリング(量的緩和の縮小)議論が開始したと考えてもらっても良い」と、正反対の発言をしたことで、ハッキリと強い米国経済への確信と金融緩和の縮小を行うことを市場に伝えたといえます。
前週からの損益 プラス930円
6月18日現在 100万930円
米FOMCの動きに注目(慶応義塾大学 2Gさん)
FX大学対抗戦4週目。もう始まって1か月程経過したが、FXの知識をきちんと取り込めたかというと正直自信はない。しかし、これまでまったく関心を持てなかったテクニカル分析について勉強を始めて、視野は広がったように感じる。
まだまだ駆け出しの段階だが、他の大学の方にしっかり追いつけるよう今後も励みたいと考える。
さて、取引だが今週(6月14日週)は様子見で終えた。大きな変動があると思ったのでリスクは回避したかったためである。一応今週のおおまかな流れを自分なりにまとめたい。
◆ 今週のまとめ
今週は、ドル買いが強まった。注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、メンバーの金利見通しで、利上げ開始時期が前倒しとなったことがサプライズと受け取れる。2023年中の利上げ派が従来の7人から13人へと増加。同年中に2回の利上げを見込むタカ派姿勢へと傾斜している。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の会見では、インフレは一時的との見方を崩さなかったが、労働市場については楽観的な見方へと変化した。米債利回りが急上昇、株式は下落、ドル相場に買い圧力が強まり、ドル円は109円台後半から110円台後半まで急伸した。
ただ、株安の動きがリスク警戒を広げる面もあり、円高圧力も広がった。クロス円の下落とともにドル円も110円付近に押し戻された。タカ派色を強めた印象のFRBとは対照的に、ECB(欧州中央銀行)は慎重姿勢を崩していない。PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)縮小の議論については時期尚早との見方と、議論開始の必要性を示唆する見方が対立しており、動きをみせるまでには時間がかかると考えられる。
イングランド銀行(英中銀)はCPI(消費者物価指数)が前年比プラス2.1%と中銀目標を上回ったことなどでインフレ警戒を強めており、早期利上げを促す声も出始めている。ハト派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁が来年中の利上げに言及し、サプライズの債券利回り上昇・株安を誘った。
◆ 来週以降の動き
6月22日(日本時間23日3時)にパウエル議長が下院特別小委員会で議会証言を行う。議会証言という場で、パウエル議長がどこまで慎重姿勢を強く見せるのか注目したい。
参考リンク:「【来週の注目材料】米国のテーパリング期待が強まる中でパウエル議長議会証言などに注目」(みんかぶ為替 2021年6月19日付)
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
FOMC(米連邦公開市場委員会)後にはドル高となり米債利回りも上昇しました。しかし、その後の2日間で全て値を戻すことになりました。1週間後も、ほぼ同じ値となっています。これをみると、これまでFOMCメンバーの発言や経済指標などから、ドットチャートの変化とテーパリング(量的緩和の縮小)の開始時期はほとんど織り込まれていたと分析できそうです。
23日には、米アトランタ連銀のボスティック総裁が2022年中の利上げを予想。続いて、ダラス連銀のカプラン総裁も2022年利上げ開始に言及しました。投票権のあるダラス連銀総裁から、さらなる金融引き締め期の前倒しに言及するのは個人的にサプライズでした。
しかし、株式市場に大きな動揺はなく、かなり安定してきている様子がわかります。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月18日現在 101万6800円
クロス円の下落に「待ってました」!(明治大学 佐藤諒さん)
今週(6月14日週)はなんといってもクロス円の大幅な下落です。水曜日(16日)から下落を始め、木曜~金曜日と大きく下がりました。たまたまではありますが、この下落を第1週目から狙っていたので、叶ってよかったと思います。
やはり長く続いた上昇トレンドの調整は大きなものとなりました。この調整がいつまで続くかはわかりませんが、続く限りは順張りのスタンスでいきたいと思います。
今週のトレード内容です。下落が始まる水曜日までは利益を出すことができませんでした。4回ほど細かい損切りに遭い、2万5000円を損しました。ここで少し今までのトレード内容をご紹介します。
まず第1週に逆指値を設定せずに放置した結果、マイナス14万円という悲惨な結果になってしまいました。それ以降の週は損切りラインを近目に設定したことにより、マイナス5000円のオンパレードです。利益が出たトレードは一度もありません。とてもつらい内容でした。
しかし、今週で挽回することができました。少し損失を出しすぎましたが、自分の理想とする「損小利大」のトレードができたように思います。
下図はGBP/JPY(英ポンド円)の4時間足チャート図です。
私は週が始まって、すぐにCAD/JPY(カナダドル)をショート(売り)しました。しかしうまくいかず、4回も損切りする羽目になってしまいました。その結果1週目から見てきたAUD/JPY(オーストラリアドル円)とCAD/JPYという選択に自信がなくなってしまいました。そこで逃げるようにポンド円を選択しました。
結果的には白点線が交差しているレンジの上値でショートすることができました。下図はGBP/JPY(英ポンド円)の30分足チャート図です。
利益確定は白点線の交差している前回高値を上抜けたポイントです。結果的には利益確定しないほうが良かったのですが、利益額が大きすぎるということと、初期投資額戻したいという強い思いもあり、利益確定しました。今思えばヘンな考えはやめて、分析に基づいたトレードをしていれば、もっと利益を伸ばせたと思ったので反省です。このトレードでプラス11万円になりました。
これからも下落は続き、自信を多少取り戻した自分はAUD/JPY(豪ドル円)に戻りトレンドラインを割った18日13時30分には入れませんでしたが、その後の15時ごろにショート(売り)しました。一時は含み損でしたが、現在(相場終了時点)では含み益6万円になっています。週末ということもあり手仕舞うことも考えたのですが、前回の反省を生かしチャートが悪くならない限り決済はしないようにと思い決済しませんでした。
おおよそ勝率は10%ほどですが、なんとかスタートラインに戻すことができました。これからも損小利大を目指し頑張りたいと思います。
◆ 今週の結果
プラス8万5000円で証拠金残高は97万円。
含み益6万円で純資産額は103万円。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
小さな損切りが続くと、判断に自信が持てなくなるのですが、我慢しながら大きな波をつかめたといえます。ナイストレードです。
さて、英ポンドの変動材料に関しては、北大と慶大のふたりにコメントしましたので、ここでは4時間足チャートに関して。5月27日にようやく上抜けたものの、その後はまったく高値を更新することができないままでいました。トレンドラインを引くと、上昇トレンドの角度が鈍化していることがわかります。通常、トレンドは後半になればなるほど参加者が増え、上昇スピードが加速し、角度も鋭角になります。その逆になるということは、近くトレンド転換が起きる可能性を意味します。
そういった目線では、6月半ばは下落リスクを警戒することができたのではないでしょうか。
保有する通貨 豪ドル円(売りポジション)
前週からの損益 プラス8万5000円
6月18日現在 103万円
プラス後の「下げ」を見込んでの「売り」を......(一橋大学 ボンゴレ)
今週(6月14日週)は大きく損失を出してしまいました。一番の反省点はFOMC(米連邦公開市場委員会)の発表によるクロス円への影響を考えられていなかったことだと思っています。今週は他の反省点も含め通貨ごとに取引内容を記していきます。
◆ 米ドル円
今週大きく米ドル円を左右したのは米FOMCでした。FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ実施の見通しが2024年から2023年に前倒しされることなどのタカ派寄りの発表を受けて米ドル買いが強まり、1米ドル=110円台後半まで上昇しました。
保有しているポジションのうち、3万通貨分が1米ドル=110.5円で約定され、3万6000円の利益を得ました。まだ、1ドル=109.25円での買いポジションは利益確定ラインを1ドル=111円に設定してあるので保有したままです。今後は1米ドル=109円台になった時を狙って、再び「買い」ポジションを保有しようと思っています。
◆ ニュージーランド(NZ)ドル円
米FOMCの結果によるドルの全面高により、クロス円は大きく下落しました。FOMCの結果がわかった後に、米ドルと他の通貨ペアの動きを一緒に見ていれば、落ち着いて今後のクロス円の動きを考えることができたのかなと思っています。
大きなイベントがあった後は、他の通貨ペアへの影響をしっかり見極めなければいけないと学ぶ良い機会だったと思います。
NZドルは保有していたポジションが損切りラインに触れたため、5万円の損失を出して決済されました。数週間単位で動きを見守ることを予定している場合ははじめから損切りラインを作るのではなく、様子を見てからラインを設定するのも戦略として候補に入れようと思います。
NZドルのもう一つの反省点は買うタイミングが早すぎたということです。何らかの指標が発表された後など、明らかに下がっている時を狙うなど、「待つ」ことが必要でした。それに加えて、月曜日(14日)、火曜日(15日)の一時的にプラスになっているときに、そのあと下がることを見込んで成行で売るという選択肢もあったと後悔しています。
利益確定ラインと損切りラインに固執せず、もう少し柔軟に対応できるようになっていけたらと思います。
先週の記事でアドバイスいただいたとおり、豪ドルNZドルの通貨ペアを見ながらどちらの通貨ペアにするか定期的に考えていこうと思います。
◆ カナダドル円
カナダドルもNZドルと同様に損切りラインに触れたため、3万円の損失となりました。こちらも買うタイミングが早かったので、今後はタイミングを見つつ取引していきます。
今週は大きなイベントの影響が他の通貨ペアに及ぼす影響を考慮できなかった自分の視野の狭さや、買うタイミングを待てなかった自分の焦りを実感する週となりました。反省を活かして、今後も頑張っていきたいと思います。
前週からの損益は、マイナス4万3645円。その内訳は、米ドルがプラス3万6000円、NZドルはマイナス5万円、カナダドルがマイナス3万円、スワップ損益プラス355円でした。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
FOMC(米連邦公開市場委員会)後のクロス円は2日で急落し、その3日後には往って来いとなる激しい展開でした。これには、バイデン大統領が19日を奴隷解放を記念して突如休日としたことで、ポジションをクローズする動きが加速した影響も大きいと感じています。
これはどう考えてもイレギュラーであったため、市場の方向性がわかりづらくなることとなりました。順を追っていくと、ややタカ派のFOMCから政策金利上昇期待につながり、商品価格の下落とインフレ率低下、そして米長期金利低下という連想でしょうか。
いずれにせよ、長期金利の上昇が緩慢なことは、今後のドル高は緩やかなものではないかと見通せそうです。
前週からの損益 マイナス4万3645円
6月18日現在 98万1345円
神奈川県出身。
ニュースとチャートのチェックは怠らず(同志社大学 FOX)
◆ 今週(6月14日週)の取引
今週は個人的に予定が詰まっていて、忙しくてあまり相場を見ることはできませんでした。ですが、少しだけニュースとチャートを見ることができたので、ファンダメンタル的な状況を把握していきたいと思います。
まず、一番今週で大きな要因となったのは米国のFOMC(連邦公開市場委員会)です。結果的にタカ派の人が増え、ドルは強く上昇しました。それに伴いオセアニア通貨などを筆頭に他通貨は売られる形となりました。
先週、損切りしていたので、結果的にいいタイミングで切れたのでよかったです。クロス円も大きく下げたイメージです。考えられるのは、クロス円が下げたからと言って、円が強くなったわけではなく、ドルへと資金が流れたことによって、いままで大幅な上昇をしていた欧州通貨や、テーパリング(量的緩和の縮小)期待の通貨などから資金が引き出されたように感じます。
他には英国などは新型コロナウイルスの変異株が出たことによる、不安感からの下げも一部あると思っています。今は少し相場がどのファクターに注目しているのかはっきりわからない相場な気がするので、来週はすこし慎重に取引したいと思います。そしてニュースのチェックは怠らないようにします。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
19日早朝に、セントルイス連銀のブラード総裁がCNBCとのインタビューで「2022年にも最初の利上げがあり得る」と発言。突然の発言に市場は驚き、米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は500ドルの下落。米短期金利は暴騰し長期金利は急落、ドルは買われることとなりました。2021年の、来年の投票権のないブラード総裁の発言でしたが、FOMC直後だっただけに驚きとなりました。
FRBの引き締め方向に動く≒インフレ抑制ですから、この長短金利の動きは自然といえます。現在、インフレ率が2%前後に落ち着けば長期金利は2.5%程度まで上昇すると予想されています。今後のインフレ関連指標で、長期金利がどの程度反応するかでドル円よりも市場参加者の思惑を図れるかもしれません。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月18日現在 101万2040円
福岡県出身。
◆100万円増額計画 FX大学対抗戦のルール学生投資連合USIC
・元本100万円のデモトレードです。
・通貨ペアはクロス円取引とします。
・レバレッジは25倍を上限(法令に基づく上限)とします。
・取引の過程で資産が「ゼロ」(元本割れ)になった場合は、その時点でリタイアとなります。
・順位は、11月26日時点の運用損益で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
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