「良い組織風土を根付かせる」ことこそが改革だ!
言葉の壁や、国民性の違いに由来する仕事に対する取り組み姿勢の違いもあって、現地では言い訳の効く、黙って日本人の指示に従う習慣が「見て見ぬふり」を生み、それが結果的に工場の大きな損失になっていたことに長らく頭を悩ませていました。
そこで彼は、とにかく「ミスが起きている」「どこかおかしい」「ヘンだ」と思ったらすぐに大声で騒げと全工員に徹底し、騒いだことを評価するというやり方を導入したのだそうです。すると、はじめはおっかなびっくり声を上げていた工員たちでしたが、ほめられ評価されることに味をしめて我先に声を上げるようになり、わずか1年間にすっかり「風土」として根付いたそうです。
組織風土改革というと、経営者はつい「悪い組織風土を改める」という観点でばかり改革を進めようとしがちです。しかし、一度根付いた悪い風土をやめさせるというのはものすごく難しいことなのです。この難しい改革をいかにすすめたらいいのか。悪い風土の払拭をしっかりと根付かせるために必要なことは、じつは「良い組織風土を根付かせる」ということなのだと、この工場長の「騒ぐ化」の手法を聞いた時に気づかされました。
みずほ銀行は第三者委員会の報告を受けて、遅ればせながらの頭取交代が予告されました。今後は新体制の下で組織風土改革に向けた再出発となるわけですが、「悪い組織風土を改める」ではなく「良い組織風土を根付かせる」という意識で、長年の懸案である3行合併風土を今度こそゼロクリアできるのか。銀行出身の立場からは、同行の取り組みが組織風土改革に悩む多くの企業にとっての手本となって欲しいと願うところです。(大関暁夫)