2021年2月から3月にかけて相次いだ、みずほ銀行のシステム障害に関する第三者委員会の報告書が公表されました。それによると、障害の原因はシステム自体の欠陥ではなく、運用する人為的側面に要因があったと強調。有事に自分の責任問題となるリスクを避けるため、積極的に声を上げることをためらいがちな企業風土がその根底にあると言及しています。
この報告の趣旨を、ひと言で言えば、今回のシステム障害に関する根本原因は、みずほ銀行の組織風土にあるいうことになるでしょう。
組織風土は厄介なれど......
みずほ銀行の組織風土について言えば、長年銀行界に身を置いてきた私が知る限りにおいて、みずほ銀行の場合は「3行合併」という特異な土壌が旧3行間のけん制と距離感をつくり出し、それがゆえに積極的に声を上げることをためらう組織風土を生んだと言えます。
そして、それはすでに「本気」のシステム統合を遅らせたがゆえの度重なるシステム障害を発生させたという過去の苦い経験を経て、早急に正すべきことであると認識されているハズではなかったのか、ということでもあるのです。
こうなってみると組織風土とは、じつに厄介なものであるとつくづく思わされます。みずほ銀行の一件と同時期に世間を騒がせた東芝の騒動もまた、その後の報道をみるに、以前の不祥事でさんざん指摘され、改善を意識していたはずのガバナンスの緩さという組織風土がいまだに根深く息づいていた。そんなことが思い知らされます。
多くの企業が過ちを犯す不祥事の数々は、その根底原因として組織風土が大きく関与しているケースがほとんどなのです。
組織風土とは、カリスマ的創業者や企業を大きく成長させた功労者がいる場合には、その人の考え方やスタイルがベースとなって形づくられていくことが間々あります。もちろん、それは必ずしも未来永劫固定されるというものではなく、たとえば創業者や功労者を継いだ後継者が先人に由来する組織風土に問題を感じて、強い意識と意思をもって変えていこうとするならば、変えることは不可能ではありません。
しかし、多くの社員が組織風土に問題を感じていても、トップがそれを問題視できていないならば、組織風土の改革は前には進まないでしょう。組織風土改革は、トップが動かなければ成功しない改革でもあるのです。