働く現場で起きているハラスメントで、最も多いのは「パワーハラスメント(パワハラ)」で約8割を占めることが、働く人のキャリアや就職・転職の調査・研究機関「Job総研」を運営する株式会社ライボの調べでわかった。2021年6月21日の発表。
また、勤務先のハラスメント対策については、「特に対策をしていない」と「対策はしているが不十分」と答えた人が9割以上にのぼった。
感染拡大の背景に「リモハラ」「コロハラ」も
調査によると、「過去1年間で職場によるハラスメントを感じたか?」という質問に、32%の人が「実際にハラスメントの被害を受けた」と回答。また15%が「当事者ではないが社内でハラスメントがある」と答え、全体の半数近くがハラスメントを感じていた。
実際に被害に遭った、または存在を感じた「ハラスメントの種類」について聞く(複数回答)と、79.7%が「パワハラ」と答え最多。次いで「モラルハラスメント(モラハラ)」で44.2%だった。
「セクシャルハラスメント(セクハラ)」と「リストラハラスメント(リスハラ)」はともに9.9%。また新型コロナウイルスの感染拡大を背景にしたとみられる「リモートハラスメント(リモハラ)」が5.8%、「コロナハラスメント(コロハラ)」の3.5%なども挙げられた。
「リモハラ」は、オンライン会議やチャットでプライベートな話題に触れたり、勤務時より仕事への干渉を強めたりすること。コロハラは感染を理由にしたハラスメントや、感染症と似た症状で不利益な扱いを受けることだ。
働く人たちの半数近くがハラスメントの存在を認識していた一方、社内のハラスメント防止対策について、「十分な対策をしている」と回答した人がわずか5.2%だった。「特に対策はしていない」は41%。「対策はしているが不十分」の51.4%を合わせた92.4%が、社内のハラスメント対策が行き届いていないと答えた。
勤務先が実施している具体的な対策(複数回答)は、「相談窓口を設けている」(54.3%)、「ハラスメントガイドラインの設定」(35.8%)などが挙げられた=下のグラフ参照。
被害者、加害者ともに男性が多数
調査では、「実際にハラスメントの被害を受けた」と答えた人の男女比は、男性が65.7%、女性が34.3%と、男性のほうにより被害があることが判明。また「誰からのハラスメントか」聞いたところ、76.2%が「男性」と答え、被害者、加害者とも男性が多かった。
被害者をさまざまな属性別にみると、雇用形態別では正社員の被害が87.2%で最も多く、年代別では20~30代が60%と最多。また勤続年数では3年以内が58.1%を占めた。
また、ハラスメントの内容(複数回答)では、「個人や能力を否定するような言動」(57.2%)、「第三者がいる場面での罵倒」(46.8%)、「役職や地位を振りかざすような言動」(43.9%)の3つの回答が目立つ結果になった。
ハラスメント被害の対応(複数回答)として最も多かったのが、「何もしなかった」の34.1%。その理由について、「相談できるような環境がない」(47.8%)、「職務上の不利益につながりそう」(43.5%)、「自分が我慢すれば良いと思った」(31.9%)などが挙げられた。また、「被害を受けているのが自分だけではないから」(11.6%)というハラスメントが横行していることを示す内容もあった。
パワハラ防止法の施行から1年
職場のハラスメントをめぐっては、厚生労働省の調査でも、近年はパワハラが拡大傾向にあることがわかっている。同省が2020年7月に公表した「2019年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「パワハラ相談」とされる「『いじめ・嫌がらせ』に関する民事上の個別労働紛争の相談件数」は、前年度比5.8%増の8万7570件。民事上の個別労働紛争の相談件数では8年連続でトップだった。
増え続けるパワハラの防止対策の一つとして、19年5月に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が成立。大企業では20年6月から施行され、中小企業は22年4月から施行される。
ライボでは、大企業向けパワハラ防止法の施行から1年経った現状のハラスメントの実態を調査。2021年6月4日~11日に、1~10年以上勤務している全国の20~69歳の男女を対象に実施。374人から有効回答を得た。