「ヤマダ家具」になる日
じつは、51%出資・子会社化の時点のニュースリリースは、大塚家具が「いずれのグループにも属さない事業体としてビジネスモデルを進化させてきた」と評価する記述があり、ヤマダHDは大塚家具の一定の独立性を尊重する姿勢だったとされ、久美子社長の続投がその証左とされる。
ただ、大塚家具の経営再建の取り組みは、ヤマダHDを満足させるものではなかった。ヤマダ傘下入りで、家具と家電の同時販売などを通じて21年4月期の黒字化を目標にしていた。既存店は、ヤマダから仕入れた家電の販売などで減収に歯止めがかかったが、それでも全社の売上高は計画を1割近く下回っていた。
今回の完全子会社化の理由を、ヤマダは「迅速な意思決定下での抜本的な構造改革」を進めるためだと説明している。ヤマダとの協業のスピード感で、久美子前社長など大塚家具との認識の差は大きかったということだろう。
少子高齢化が進む中で、ヤマダは家電だけでは成長が見込めないとして、家電を軸に家具や住宅などを扱う「暮らしまるごと」戦略を掲げ、リフォームや新築戸建て住宅、家具などに事業を拡大してきた。家具・インテリアも扱う「家電住まいる館」を中心に、100以上のヤマダの店で大塚家具の商品を販売してきた。
この路線をさらに加速し、売り場の半分弱を家具や雑貨などの「非家電」にする新業態の店舗を21年から年間30店程度出店する方針を打ち出している。ここでは、大塚家具の高級メーカーから仕入れる力、高額品を販売するノウハウは大きなカギになる。だから、大塚家具がこれ以上再建に手間取るのを待ってはいられないということだろう。
ヤマダHDが2011年に買収した名門ハウスメーカー「エス・バイ・エル」は業績不振を脱せられず、18年に完全子会社化。ヤマダの他の住宅子会社と合併し、社名も「ヤマダホームズ」となった。大塚家具が「ヤマダ家具」となる日が遠からず来るのだろうか。(ジャーナリスト 済田経夫)