東京五輪・パラリンピックの開催までちょうどひと月。本来あってはならないことが起こった。東京五輪に出場するウガンダの代表選手団から新形コロナウイルスの陽性者が見つかり、水際対策が「ザル」であることが明らかになった。
その一方で、水際対策を厳しくしたインドから「差別だ」という抗議を受けるありさま。さらに、ある大国が裏から水際対策の手抜きを日本政府に画策しているという。大丈夫か、ニッポン?
日本の水際対策すり抜けに自信を持つ英国
東京五輪・パラリンピックでの日本の水際対策だが、「バブル方式」の厳しい隔離ルールが思わぬ国々から猛反発を招いている。現在、組織委はインド型(デルタ型)変異ウイルスが流行している国・地域の選手らに対し、入国後3日間は他国・地域の代表と練習試合を行わないよう求める方針を示している。
これに対して、インドオリンピック委員会(IOA)が、「差別だ」として、日本政府と組織委に抗議文を送ってきたのだった。
インド最大の新聞「タイムズ・オブ・インディア」(6月21日付)が「Tokyo Olympics:Every 10 minutes we get a heart attack says,IOA chief Batra」(東京オリンピック:怒りのために我々は10分ごとに心臓発作を起こしそうだとIOAのバトラ会長は言った)という激しい見出しでこう報じた。
「バトラ会長は、トウキョーに到着する選手たちは新しい検疫規則の高いハードルに直面するにもかかわらず、空飛ぶ虹色の輝きを出してくれると信じている、と述べた。しかし、選手たちは隔離という不当な扱いを受ける。彼らの中には菜食主義者もいる。どうやって体調を整えろというのか。インドの全人口の声を彼らの背に届けたいが、スタンドは空だと怒った。しかし、バトラ会長はそれでも選手たちはメダルを二けたとってくれると約束した」
インドのようにストレートな抗議ではなく、裏から手を回して日本の水際対策をすり抜けようとする大国もいる。イギリス選手団だ。
英国の公共放送BBCニュース(6月15日付)「Tokyo 2020: Team GB athletes face quarantine in hotels」(東京五輪・パラリンピック:英選手団、入国時のホテル隔離回避を働きかけ)が、こう伝える。
「東京五輪の英国選手団が、日本に到着後6日間、指定のホテルから外に出ることを禁じられて隔離される可能性に直面している。日本の厳格な新型コロナ対策のためだが、選手団は適用除外を働きかけており、実現できると楽観視している」
というのだ。
英国では変異ウイルスのインド型株(デルタ株)の感染が急拡大している。これを受けて日本政府は、6月7日から、すべての英国からの入国者に宿泊施設での6日間の待機を義務付けた。東京五輪・パラリンピック組織委員会は、選手の隔離についても例外は認めないとしているが、英国選手団はこの問題を解決するための方法を探っているのだ。IOCが6月15日に新たに発表した厳しいガイドライン(プレーブック)は、隔離措置に違反すれば、大会への参加資格のはく奪や強制送還される可能性があるとしている。しかし、英国選手団には何かうまい方策があるようだ。BBCがこう続けるのだ。
「英国オリンピック委員会(BOA)は、特定の条件を満たすことで、選手や関係者を隔離の対象外にすることを、日本側に認めさせることができると考えている。その条件とは、選手や関係者全員が2回のワクチン接種を完了し、追加検査を受けることだとしている。BOAのヒュー・ロバートソン委員長は先週、ハシモト東京大会組織委員会会長に文書を送付。英国選手団が受けている検査が、東京大会のプレーブックの水準を上回るものだと説明した」
英国選手団は、300人超の選手のうち最大86%が1回以上のワクチン接種を済ませた。また、英国政府は、18歳以上の全国民が今週末までに接種の機会を提供される予定だとしている。ただ、選手団の中にはワクチン接種の対象年齢外の選手も少なくない。たとえば、体操のジェシカ・ガディロヴァ、ジェニファー・ガディロヴァの双子選手はともに16歳だ。だが、日本に入国するまでに大半の選手が2回の接種を終えることを条件に、日本を説得できると考えているようなのだ。
BBCはこう結んでいる。
「かつて隔離措置の対象となったスポーツ選手は、体調管理に苦労した。今年1月のテニスの全豪オープンでは、選手とコーチらがメルボルンのホテルで2週間、隔離生活を送った。選手たちはホテルの部屋で壁や窓に向けてボールを打つなどして感覚の維持に努めた」