決算書100本ノックがおもしろい!
「週刊ダイヤモンド」2021年6月26日号
「週刊ダイヤモンド」(2021年6月26日号)の特集は「最新超楽チン理解 決算書100本ノック」。ベストセラー「会計の地図」を使い、財務3表を理解するとともに、主要15業種の決算書を読み込んでいる。
「賞与ゼロ提案をするほど業績悪化でもANAがつぶれずにいる理由」では、経営破たんリスクを2段階で回避したと説明している。まず大借金で手元資金を確保し、資金ショートを回避。次に公募増資で資本を増強、債務超過リスクを回避したという。
苦境が続く外食で勝ち組と言われる、すき家とスシローの2社を比べ、「借金戦略」を分析した記事も興味深い。すき家などを運営するゼンショーホールディングスは劣後ローンの比率が高く、スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES(フード&ライフ)は社債の比率が高い。フード&ライフは外食業界で唯一のA格を持つため、銀行借り入れを比較しても安く資金を調達することが可能だ、と説明している。
一方、ゼンショーの格付はBBB格。「財務戦略の選択肢が豊富という点においては、A格を持つ、フード&ライフに軍配が上がるといってもいいだろう」と書いている。
「決算書100本ノック」を受けてみよ!
このほかに、好決算でも笑えないみずほフィナンシャルグループ、日本基準では減損なのに国際会計基準では利益という伊藤忠商事など、決算書からわかる各社の内情を伝えている。無味乾燥と思われる決算書が何より雄弁に語っていることに驚かされた。この特集を読み、財務3表の勉強をしようと思う読者も多いはずだ。
第2特集は「トップMBAが教える新・資本主義」。米ハイテク大手、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOが「資本主義よ、おまえはもう死んでいる」と昨年のダボス会議で発言した真意を取材している。その発言とはこうだ。
「ビジネスリーダーたちに伝えたいのは、私たちが知っていた資本主義というものは、もう死んでいるということだ。株主利益の最大化に対するわれわれの強迫観念は、信じられないほどの不平等を生み、地球の緊急事態を招いてしまった。今求められているのは、新しい資本主義である。より公平、公正で持続可能な、利害関係者と株主の両方を支えるステークホルダー(利害関係者)資本主義だ」
ステークホルダー資本主義への転換は、日本を含む世界の産業と金融に大きな影響を与えることは確実だ、と指摘している。
特集では、大学院大学至善館理事長の野田智義氏とサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が対談。スペインのIESEビジネススクールが大学院大学至善館と共同で開いた講座の内容を紹介している。現代の資本主義は間違っているのか、という難題が、世界で話し合われているということだけは知っておきたい。(渡辺淳悦)