6月は環境月間だ。環境を保全するためにどうしたらいいのか。最近、よく耳にする「SDGs」(持続可能な開発目標)とは何なのか? 6月は環境に関する本を紹介しよう。
取引先の会社から「お宅はSDGsどうすんの?」と、尋ねられたことはないだろうか?
日本の上場企業の61.6%ではすでにSDGsの取り組みを始めており、30.5%は取り組みを検討中だ(年金積立金管理運用独立行政法人の調査、2020年)。ところが、中小企業では認知度がまだまだ低い。どうしたら、お金も時間もない中小企業でもSDGsの力を活用できるだろうか。本書「小さな会社のSDGs実践の教科書」は、そのための絶好のテキストだ。
「小さな会社のSDGs実践の教科書」(青柳仁士著)翔泳社
17あるゴールから選ぼう
著者の青柳仁士さんは、一般社団法人SDGsアントレプレナーズ代表理事。国連開発計画(UNDP)、国際協力機構(JICA)などに勤務。SDGsが始まった2016年にUNDP駐日代表事務所の広報官としてSDGsの普及に従事した。
SDGsを実践すると自社を持続可能にし、商売を拡大させる膨大な可能性を秘めているという。2018年のダボス会議では、SDGsが生み出す付加的な経済価値は、食料と農業、都市、エネルギーと材料、健康と福祉という4つの経済システムにおける60の領域だけで、1300兆円を超えると試算された。その中には大企業ではなく中小企業のほうが対応しやすいものも多い。
本書の構成は、
ステップ1 SDGsをはじめよう
ステップ2 取り組み課題を決めよう
ステップ3 共通コストを減らそう
ステップ4 共通価値を生み出そう
ステップ5 SDGsビジネスをつくろう
ステップ6 SDGsを会社に定着させよう
ステップ7 成長のサイクルを回そう
となっている。
難しいことはない。決意さえあれば誰でも参加できるのがSDGsだ。SDGsのゴールは17もある。その中で、最も大事だと思えるゴールを選ぶのがコツだ。
ちなみに17のゴールとは、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる、すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる、などだ。ざっと目を通して、共感できる、できそうなものを選べばいいだろう。
次にすることは、取り組む意志を形にすることだ。会社で実施するときは、まず感度の高い若手を巻き込もう、と書いている。コンテストやゲームなどエンターテインメントにして、楽しく参加を促すのがいいだろう。
SDGsのシンボルマークを身につけるのも有効だ。カラーホイールのバッジを襟に付けている人も多い。これらのシンボルマークは、商業利用でない限り、誰でも使うことができる。公式のSDGsのバッジは国連のオンラインショップから購入することができる。アマゾンや楽天などでもさまざまな業者が販売しているが、国連の承認を取っているものと、そうでないものがあるから、確認を呼びかけている。
青柳さんは、まずは個人で簡単な行動から始めよう、と書いている。次に会社という一つの共有の場で実行するといい。社員全員で取り組める具体的な行動の例として、以下のことを挙げている。一部を抜粋する。
・立場の弱い人の身になろう
・残さず食べよう
・健康診断を受けよう
・セクハラを見過ごさない
・階段を使おう
・マイボトルを持参しよう
これなら、会社でもできると思う人も多いだろう。