株価が伸び悩むワケは?
だが、今回のFDAの承認には「条件」が付いており、臆測を呼ぶ原因となっている。認知機能の悪化を抑える肝心の効果について、FDAが設置した諮問委員会が懐疑的だったため、「条件」として有効性を確認するための検証試験の実施が義務付けられているのだ。
検証試験で期待した効果が確認できなければ、承認が取り消される可能性も残っている。FDAの承認後に急上昇した株価が、その後は伸び悩んでいるのは、市場がこうしたリスクを警戒しているのだ。
アデュカヌマブに関するFDAの判断を巡っては、諮問委員会の懐疑的な姿勢にもかかわらずFDAが承認に踏み切ったことに抗議して、諮問委員会のメンバー3人が辞任したと米国では報じられている。
現にFDAは「臨床試験からは効果が不確実」としているが、脳内の有害な物質を減少させることは認められ「臨床上の有用性を合理的に予測できる」と、やや強引な結論を導き出している。こうした経緯には不可解さが残り、今後の検証試験の結果次第ではFDAの審査の妥当性も問われかねない。
大型ブロックバスターの誕生か。はたまた、ぬか喜びで終わってしまうのか。今後の検証試験の行方を世界中のアルツハイマー病患者や医薬品業界、株式市場が固唾を呑んで見守っている。 (ジャーナリスト 済田経夫)