【6月は環境月間】SDGsは新型コロナウイルスの克服にも役立つ!

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新型コロナウイルスの急性的危機への処方箋

   第3章では、「日本のSDGs」を取り上げている。政府の内閣官房にSDGs推進本部が設置され、8つの優先課題を定めている。そして、「地方創生SDGs」などのアクションプランを策定している。

   日本の持続可能性を考える上で、地域の持続可能性の問題が最も困難であることから、本書でも各地の「地方創生SDGs」の取り組みに触れている。

   稲場雅紀さんが、「持続可能な開発のための教育」(ESD)を進める岡山市の行政とNPOが協働した、まちづくりの例や鳥取県智頭町の持続可能な林業と人材育成について紹介している。智頭町は高齢化率40%の山村だ。「福祉という視点をもって、産業、防災、社会との関わりを始めていくと、すべてが一つにつながっていく。福祉ってそういう上位概念ではないでしょうか」という林業家・國岡将平さんの言葉を紹介している。同町は2019年に「SDGs未来都市」に認定され、さまざまな生業が起こり、移住者も増えている。

   世界と日本、両方の視点でSDGsを捉えているのが、本書の特徴だ。さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)との関係についても言及しているのが、示唆に富む。

「じつはSDGsがその序文や宣言、目標、実施手段、フォローアップとレビューという各パートで掲げる原則や方法は、COVID-19がもたらしている急性的危機を克服へと導く処方箋としての価値を持っているのである」

   「きれいごと」として表面的な関心しか持たれていなかったSDGsが、新型コロナウイルスの克服にも役立つというのだ。確かに、貧困をなくす、飢餓のない世界、福祉と健康、安全な水と衛生、国内・国家間の不平等をなくすなどのゴールは、新型コロナウイルス対策において重要な意義を持つ。副題の「危機の時代の羅針盤」という通りである。

(渡辺淳悦)

「SDGs 危機の時代の羅針盤」
南博・稲場雅紀著
岩波書店
902円(税込)

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