「2人の受験生を置いていくのか!」と夫も反対 夢だった海外赴任に悩む母親に「すぐ行っちゃえ!」とエール

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   長年の夢だった海外赴任の話が舞い込んできたワーキングマザー。

   しかし、彼女には超難関国立大学を目指す長男と、公立トップ高校を目指す2人の優秀な息子がいた。夫も、

「子どもが大事な時期に家庭を省みないのか!」

と反対した。

   ネット上では、

「夢に向かって突き進め!」「今すぐ海外に行っちゃえ!」

という応援エールと、

「子どもの幸せが一番です。あきらめなさい」

と諭す意見と賛否両論が起こっている。専門家に聞いた。

  • 長年の夢だった海外の職場に行けるか
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妻の昇進や活躍を喜ぶよりも不機嫌になる夫

   話題になっているのは、女性向けサイト「発言小町」(6月12日付)に載った「長年の夢だった海外赴任が叶いそうですが、迷っています」というタイトルの投稿だ。

「48歳。高3と中2の男子を持つワーキングマザーです。外資系企業に勤めています。ずっと希望していた海外勤務の夢がもうすぐかないそうですが、迷っております。上の子は受験生、下の子も来年は受験生。長男は公立のトップ校に通っており、難関国立大学を目指して猛勉強中。次男も成績がよく、長男と同じ公立高校を目指して勉強をしています。親が勉強しなさいと言わなくても自主的に勉強する子どもたちなので、そこは助かっています」

   海外勤務は1年程度だが、単身赴任がベストだと思う。子供たちも、もう親離れ子離れしてもいい時期ではないかと思っている。仮に次男を連れて行っても、高校受験が終わった頃に帰国となり、希望している公立高校は一般入試しかないため入れない。何よりの問題は夫がよい顔をしないことだった。

「子どもの大事な時期に海外に行くとはあり得ない、といった感じです。私が働くこと自体は賛成していますが、キャリアを追い求めることはよしとしておらず、私の昇進や活躍について喜ぶよりもむしろ不機嫌になる人です」

と、迷いに迷っているようなのだ。

   この投稿には、6割以上の人が「夢をかなえよう!」「今すぐ海外に行っちゃいなさい!」とエールを寄せてきた。

「チャンスが再びある保証はあるのですか? 家族の都合を優先していたら、いつだって無理です。家族を信じて夢をかなえましょう。夫と息子にあなたの想いをしっかり伝えましょう。中高生なら、そう親の出番はありません。進学校ならしっかり進路指導もあるでしょうし、父親がいれば十分。1人海外でチャレンジしている母親と、オンラインで話すのは良い刺激になるのでは? 後々、家族のせいで夢をかなえられなかったと悔やんでも、その家族に感謝されることは一切ないと思いますよ」
「同じ年代の子がいます。下の子が中2というのが少々気にかかりますが、1年程度なら連れて行ってもいいと思います。公立高校の受験に間に合わなくても、海外留学の経験ができるし、私立なら編入できます。親子一緒にチャンスは生かしましょう!これ、夫さんなら迷いなく、海外赴任に行くわけだし、母親だからと諦めなきゃいけないのは不公平です」
「高校生と中学生の男子でしょ。旦那に任せて、とっとと単身で赴任すればいかがですか? 変に迷うと、女性は動かしにくいなんて悪評が立つかも。そうすると、あなたに続く若い女性たちのチャンスを潰します。赴任して拠点を構えたら、夏休みに子どもたちを来させるのです。留学も視野に入れて、現地の学校とか見せてあげればいいよね。早く行きなさい!」

息子たちが誇りに思う素晴らしい母親になるチャンス

「人生は一度切り。私だったら絶対海外に行くな。行かなかった後悔と、行った後悔を比較してみてください。お子さんと夫さん、男3人で暮らしたら母親のありがたみがわかります。子どものための人生ではありません。子どもには子どもの人生があるように、親には親の人生があります」

   息子たちの今後の人間形成のためにも、絶対に行くべきだという意見もあった。

「私は海外勤務を何度かしています。息子さんにも素晴らしい教育の機会。女性も職業を持ち、仕事を通じて自己実現を図るのが当然の時代なのだということを、身をもって子どもに教えることができます。優秀な息子さんたちは将来、グローバルな社会で生きていくでしょう。夫のような時代遅れの感覚を息子さんたちが受け継いでしまったら、グローバルなビジネス社会では相手にされません。自分は自分の仕事をしたいから海外に行くのだと、息子さんにきちんと話して赴任すればいい。頭のよい息子さんのようだから、やがて必ず理解するし、そういう母親の選択を尊敬すると思いますよ。息子さんが後々誇りに思える素晴らしい母親になるチャンスです!」
夫婦のすれ違い。夫は海外赴任を歓迎しない
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   一方、少数派だが、「子どもの幸せが最優先」と、今回は海外にいくべきではないという意見もあった。

「子どもの幸せが最優先。私ならあきらめるな。お子さんたちが将来留学を希望するかもしれません。願いを託すという考え方はいかがでしょうか」
「残念ですが、今は海外赴任を辞退するのが得策と考えます。それと『親離れ子離れ』の意味ですが、それは、子が親に、親が子に、経済的や精神的に依存することをやめることです。あなたの今の状況では、親が子のためにいろいろするのは依存ではなく責任です。その責任は十分に果たす必要があると思います」

   J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、今回の「長年の夢の海外赴任をとるか、息子たちの受験をとるか」という投稿に関する論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。

――今回の投稿と回答者たちの意見を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「今はコロナ禍で仕事を失った人も多く、またお子さんが思うように勉強しないと悩むご家庭もあります。その点、投稿者さんは、やりがいある仕事と優秀なお子さんに恵まれて、その環境を羨む人も多いと思います。しかし、お気持ちが率直に綴られているのを見て、投稿者さんが置かれている立場だからこその悩みがあるのだと感じました」

――回答者の多くが、せっかく夢をかなえるチャンスなのだから、単身赴任でもいいから海外に行くべし、と背中を押す応援エールです。

川上さん「もしも、同じ悩みを30年前の日本で相談していたら、家庭の事情を優先すべきだという声の方が多かったのではないでしょうか。海外赴任すべきか悩む投稿者さんにエールを送る声の多さに、時代と価値観の移り変わりを感じます」

子どもには子どもの人生、親には親の人生がある

――一方、「あきらめたら」とか「もう少し待ったら」という意見も少なくありません。それは、「受験という大事な時期だから、母親は子どもを最優先に考えるべきだ」というものです。

川上さん「お子さんの将来にも関わる話なので、お子さんの意見もぜひ聞いてあげていただきたいと思います。また、親の責務として、子どもを最優先に考えるべきという考え方もよくわかります。ただ、子どもを最優先に考えることが、子どもの都合のみを考えて、親の意思は一切入れるべきではないという意味だとすると疑問です。子どもには子どもの人生があるように、親にも親の人生があります。どちらか一方がどちらかの犠牲になるという考え方だと、犠牲になるほうの人生はつらくなってしまいます。家族の誰かが犠牲になることを他の家族が喜ぶとも思えません。
また、仮に親が自分の意思を押し殺して犠牲になった場合、それは子ども自身が将来親になった時の自分の姿として投影されてしまう可能性もあります。キレイに落としどころを見つけるのが難しい問題ですが、誰かが犠牲になることを前提にするのではなく、子ども自身の未来のためにも、親も子も双方が納得できる結論を導きだす努力が大切になってくるのではないでしょうか」

――夫の存在ですが、海外に行かせたくないようだし、妻の昇進や活躍については、喜ぶより不機嫌になるタイプと書かれています。こういう夫に対しては、どうしたらよいと思いますか。

川上さん「妻の立場から見ると、無理解な夫ですね。それは夫が持っている偽(いつわ)らざる価値観なのでしょう。夫の中には『妻は家庭を優先すべき』『親が犠牲になってでも子どもを優先すべき』という考え方が確立されているのかもしれません。そうした考え方に対し、『なぜ妻ばかりが家庭を優先しなければならないのか』とか『親だってやりたいことをやっていいはずだ』などと真っ向から反論しても、互いの主張や感情をぶつけ合うだけになってしまうでしょう。
夫の考え方に反論する前に、まずは投稿者さん自身がどう考えていて、何がしたいのかを改めて夫に伝えることが必要だと思います。そのうえで、お子さんの受験とともに、投稿者さん自身の願いを叶えることも含めて〈家族の課題〉と捉え直すことが大切なのではないかと考えます」

夫と正論を戦わせるより子どもを巻き込もう

――なるほど。こういうタイプの夫には、正論をぶつけあっても生産性がない。それより、子どもたちも巻き込んで家族の課題として話し合ったほうが、解決策が見つかりやすいというわけですね。

川上さん「そのとおりです。家族とは、生活する中で互いに影響しあう存在です。家族の中の誰かの願いをかなえることは、その人一人だけの課題ではなく、家族全員で共有し解決すべき〈家族の課題〉なのだと思います。〈家族の課題〉を解決するために、ともに知恵を出し合う方向で相談すれば、夫婦の目線が合わせやすくなるでしょう。諸手を挙げて賛成とまではいかなくても、夫婦が互いに納得できる落としどころを見つけやすくなるのではないでしょうか」

――今回の海外勤務の話は、夫なら何の問題もなく海外に行くであろうに、妻がこれほど悩むのは不公平だという意見が多くありました。

川上さん「私も個人的に、不公平で性別役割分業ありきの考え方だと感じます。しかし、夫婦の間で『何が正しいか』を議論しても、感情が先走ったり、水掛け論になったりすることのほうが多いものです。それぞれのご夫婦にはご夫婦ごとに異なる関係性があるので、共通の正解があるとは思いません。ただ、互いの意思や価値観を尊重しあうことは大切です。だからこそ、まずは投稿者さんご自身の考えを伝えて夫に知ってもらい、逆に夫の考えにも耳を傾けることから始める必要があると思います。投稿者さんご自身も、これまで気づかなかった夫の気持ちや言い分を聞くことができるかもしれません」
次男は公立トップ高校を目指し勉強中
次男は公立トップ高校を目指し勉強中

――川上さんなら、ズバリこの投稿者にどうアドバイスしますか。

川上さん「極端な想定かもしれませんが、仮に投稿者さんが海外赴任をあきらめて日本に残ったとしても、急な病気やケガなどで長期入院せざるを得なくなり、投稿者さんが家庭にいない状況が発生してしまうことだってありえるかもしれません。その時お子さんは、その状況を受け入れたうえで受験と向き合わなければならなくなります。海外赴任のチャンスが再び巡ってくるかどうかも不明です。世界中がコロナ禍に見舞われる想定外の事態が、今後も起こらないとも限りません。
人生何が起きるかわからない中で、ご自身が犠牲になることが絶対に正しいと言い切れるものではありません。ご自身の中に海外赴任に対する明確な意思があるならば、ご自身の意思も尊重していただいたうえで、家族全員が納得できる形をご家族と共に模索していただきたいと思います」

――本当に海外に行きたい気持ちがあるのなら、思い切って行きなさい!ということですね。

川上さん「はい。お子さんの受験を心配する気持ちは、親として当然だと思います。しかし、そのために海外赴任の夢をあきらめたら、逆にお子さんに過度なプレッシャーを与えてしまう可能性もあります。もし受験が望ましい結果でなかったとしたら、お子さんが自分自身を必要以上に責めてしまう心配もあります。
人生100年時代と言われる中で、仕事をすることの意味合いが変わってきています。生涯を通して人生をより充実させるための『生きがい』としての意味合いがより重要になってくるでしょう。家族の理解と協力によって、海外赴任の経験を積むことができたら、その経験は投稿者さんにとって、シニア後の未来を含めた人生全般をより充実させる糧となる可能性も秘めていると言えるのではないでしょうか」
(福田和郎)
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