子どもには子どもの人生、親には親の人生がある
――一方、「あきらめたら」とか「もう少し待ったら」という意見も少なくありません。それは、「受験という大事な時期だから、母親は子どもを最優先に考えるべきだ」というものです。
川上さん「お子さんの将来にも関わる話なので、お子さんの意見もぜひ聞いてあげていただきたいと思います。また、親の責務として、子どもを最優先に考えるべきという考え方もよくわかります。ただ、子どもを最優先に考えることが、子どもの都合のみを考えて、親の意思は一切入れるべきではないという意味だとすると疑問です。子どもには子どもの人生があるように、親にも親の人生があります。どちらか一方がどちらかの犠牲になるという考え方だと、犠牲になるほうの人生はつらくなってしまいます。家族の誰かが犠牲になることを他の家族が喜ぶとも思えません。
また、仮に親が自分の意思を押し殺して犠牲になった場合、それは子ども自身が将来親になった時の自分の姿として投影されてしまう可能性もあります。キレイに落としどころを見つけるのが難しい問題ですが、誰かが犠牲になることを前提にするのではなく、子ども自身の未来のためにも、親も子も双方が納得できる結論を導きだす努力が大切になってくるのではないでしょうか」
――夫の存在ですが、海外に行かせたくないようだし、妻の昇進や活躍については、喜ぶより不機嫌になるタイプと書かれています。こういう夫に対しては、どうしたらよいと思いますか。
川上さん「妻の立場から見ると、無理解な夫ですね。それは夫が持っている偽(いつわ)らざる価値観なのでしょう。夫の中には『妻は家庭を優先すべき』『親が犠牲になってでも子どもを優先すべき』という考え方が確立されているのかもしれません。そうした考え方に対し、『なぜ妻ばかりが家庭を優先しなければならないのか』とか『親だってやりたいことをやっていいはずだ』などと真っ向から反論しても、互いの主張や感情をぶつけ合うだけになってしまうでしょう。
夫の考え方に反論する前に、まずは投稿者さん自身がどう考えていて、何がしたいのかを改めて夫に伝えることが必要だと思います。そのうえで、お子さんの受験とともに、投稿者さん自身の願いを叶えることも含めて〈家族の課題〉と捉え直すことが大切なのではないかと考えます」