動かぬスルガ銀行に業を煮やしたノジマ
スルガ銀行も、方向性として、ノジマの目指す協業を進める考えではあったが、「スピード感が違っていた」と、関係者は指摘する。
業を煮やしたノジマは、21年6月の株主総会をにらみ、5月下旬の決算取締役会に向け、独自の人事案を現スルガ銀経営陣に示したという。社長を含め、現取締役の半数以上の交代を求めるものだった。
じつは1年前の株主総会に向けても、ノジマ側は社長候補を推薦したが、スルガ銀経営陣の反対を受け、この時は野島氏の副会長就任などで矛を収めた経緯がある。今回、ノジマとしては、もはや引けないとの覚悟での人事提案だったが、5月27日の取締役会ではノジマ側の提案は否決され、現経営陣の案が通った。このため、ノジマ側は野島副会長退任、提携解消へと舵を切った。
今後の提携解消に向けた協議では、ノジマが保有するスルガ銀株(18.52%)の行方が最大の焦点だ。足元でスルガ銀の時価総額は800億円程度で、160億円程度で筆頭株主の地位が手に入るわけだが、金融機関、あるいは異業種で食指を伸ばすところが出てくるか。
スルガ銀の経営危機の発火点となった投資用不動産関連の不正融資の後始末では、シェアハウス購入者については物件を手放すことを条件に事実上、借金を免除する解決策で合意しているが、シェアハウス以外の中古アパートといった1棟物件やマンションでは同様の解決を拒んでいる。このため、シェアハウス問題に取り組んできた弁護士らが、新たに「被害弁護団」を組織し、説明会にアパートなどの購入者約150人が参加するなど、問題はなお尾を引くのは確実だ。
スルガ銀の前途には、なおいばらの道が続いている。(ジャーナリスト 白井俊郎)