一石二鳥の「1万人」という観客数
毎日新聞(6月17日付)「五輪有観客 チケット収入、組織委固執」が、こう説明する。
「これまでも大会開催に異議を唱える世論の逆風は強かったが、政府はかたくなに無観客のカードを切らなかった。『有観客』にこだわった理由はどこにあるのか。まずはチケット収入の問題が大きい。組織委はチケット収入として約900億円を大会予算に計上していた。これがゼロになれば決算は赤字になり、どこが負担するかという新たな問題が生じる。組織委、東京都、国で押しつけ合う泥仕合になりかねない」
その際、「1万人」という観客数は絶妙に考え抜かれた数字なのだという。
「現在販売済みの五輪のチケット枚数はスポンサー分なども含めて全体の約42%。競技日程ごとの割合でも大半が50%以下だ。政府は大規模イベントの観客上限を定員の50%以内なら1万人とすることを示している。これを五輪にも適用すれば、いったん購入されたチケットの代金を払い戻したり、観客数が足りなくて再抽選したりせずに済む」
赤字を防ぐことができるうえ、高倍率をくぐり抜けてチケットを得た人々の恨みも買わずにすみ、一石二鳥の妙案なのだった。
一方、政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、6月16日放送のTBS系情報番組の「ひるおび!」で、別の理由をこう明かした。
「無観客で開催された場合でも、日本人の観客が入れなくても、IOCファミリーと呼ばれる主催者側の人たちが、数百人、あるいは数千人規模で観客として入れるのですよ。そうすると、『あの人たちはなんだ!』という声が起こって国内世論的にもたない。だから観客をできるだけ入れたいという事情もあります」