東京都を含む9都道府県に出されていた、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が2021年6月20日に解除されることになった。6月17日、政府の対策本部の会議で決まった。
東京都の感染がリバウンドに転じたことが明らかなのに、何が何でも東京五輪・パラリンピックを強行したい菅義偉政権は、観客を入れて開催させることも狙っている。
政府やIOC(国際オリンピック委員会)に直訴すると言っていた政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は、なぜ政府の暴走を認めてしまったのか。
「尾身の乱」はいったいどうなったのか――。
五輪観客ありで都内の感染者最大1万人増
東京五輪・パラリンピックを「観客を入れて開く」ことには、政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長ならずとも専門家からは「非常に危険だ」という指摘が多い。
朝日新聞(6月17日付)「五輪観客ありで都内の感染者最大1万人増 京大など試算」が、こう伝える。
「東京五輪・パラリンピックを観客ありで開催した場合、7月23日の開会から8月下旬までの東京都内の新規感染者数が、無観客の場合と比べ最大1万人増える可能性があるという試算を、京都大や国立感染症研究所がまとめた。インド型(デルタ型)変異株の広がりによっては、さらに悪化する可能性もある。6月16日に開かれた厚生労働省の専門家組織の会合に提出した。最速で7月前半に緊急事態宣言の再発令の見通しも示した」
6月20日に緊急事態が解除された後、人の流れやインド型(デルタ型)変異株の広がりを、観客を入れて人流が活発になる「影響が大きいパターン」と、無観客で比較的人流も少ない「影響が小さいパターン」で試算すると、「影響が大きいパターン」では東京都内の感染者が1日1000人を超えるタイミングが7月前半にくる。東京五輪が始まる前に緊急事態宣言を出さざるを得なくなる。そして、毎日300人増のペースで新規感染者が出てくるというのだ。オリンピックどころではないだろう。
「影響が小さいパターン」でも、1日1000人を超えるタイミングが7月後半から8月にずれるだけで、緊急事態宣言の発令は避けられない。いずれにしても、6月20日に東京都で緊急事態宣言を解除することがいけないわけだ。
そんな危険性があるのに、なぜそれ以上にリスクが高まる「有観客」にこだわるのか。