「尾身の乱」はやっぱり腰砕け! 東京五輪に観客、感染大爆発の暴走がもう止まらない(1)

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   東京都を含む9都道府県に出されていた、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が2021年6月20日に解除されることになった。6月17日、政府の対策本部の会議で決まった。

   東京都の感染がリバウンドに転じたことが明らかなのに、何が何でも東京五輪・パラリンピックを強行したい菅義偉政権は、観客を入れて開催させることも狙っている。

   政府やIOC(国際オリンピック委員会)に直訴すると言っていた政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は、なぜ政府の暴走を認めてしまったのか。

   「尾身の乱」はいったいどうなったのか――。

  • 尾身茂会長の「尾身の乱」は腰砕けに?
    尾身茂会長の「尾身の乱」は腰砕けに?
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政府も認める「五輪期間中の緊急事態宣言」

   東京都の新型コロナウイルスの新規感染者は6月16日に501人となり、13日ぶりに500人を超えた。前週の同じ曜日より61人も増えた。翌17日も452人と前週の同じ曜日より13人増えた。2日続けて増えたわけだ。下げ止まりどころか、リバウンドに転じている。

   しかし、それでも6月17日、政府の基本的対処方針分科会が開かれ、尾身茂会長は政府案どおり東京都の緊急事態宣言を解除し、まん延防止等重点措置に移行する方針を了承したのだった。

   主要メディアの報道をまとめると、分科会を終えた尾身氏は記者団の取材に応じ、「東京都の解除について3つの条件をお願いした」として、こう語った。

「東京都についてかなり議論があった。東京都は感染が下げ止まりか、少しずつ増加しつつある。そこで3つの条件を示して政府に納得してもらった。1点目は、再拡大を防ぐためにしっかりと予算を付けて、ワクチン接種をやってくれということ。2点目は、感染が再拡大する兆候が見られたら、躊躇せず強い対策を打つこと。3点目は、政府が感染状況をどのような状態にしたいのか、どんなことをしなければならないのかという大きなビジョンを示すこと。この3つを条件としてお願いした」

と述べた。

   何だか、当たり前のように思える条件だ。肝心の東京五輪・パラリンピックについては触れなかったのだ。 東京都の感染状況については、政府側も危機感を持っているようで、田村憲久厚生労働大臣も記者団にこう語った。

「東京都の昨日の新規感染者数は、前週より増えている状況で、若年層は増加の兆しが見えている。非常に心配なところだ。新規感染者が増えた場合、国民の健康、命が大切なので、いかなる時でも緊急事態宣言を含めた対応を考える」

と、東京五輪開会中の緊急事態宣言もあり得るという見方を示した。ただし、東京五輪をやめるかどうかは言及を避けた。

五輪開催の是非には触れない尾身氏の提言

   これはトンデモない話で、6月17日放送のフジテレビ系情報番組「バイキングMORE」の取材に応じた二木芳人・昭和大学客員教授(感染症学)は、こう憤ったのだった。

「東京五輪中に緊急事態宣言なら、その時点ですぐに中止していただきたい。やはり医療提供体制が非常に心配です。第3波のように東京でも2000人、3000人と感染者が出るようでしたら、お祭り騒ぎどころではなくなってしまいます」

   また政府は6月17日、イベントの収容人数に関して、まん延防止等重点措置が解除された地域で1か月程度、観客受け入れの上限を1万人とする方針を打ち出した。

   これは明らかに東京五輪を「有観客」で開くことを見越した措置だが、尾身会長はこれも分科会で認めてしまった。

   尾身会長は記者団に、

「(1万人の問題は)東京五輪とは関係した話ではない、ということを政府側に確認して了承した。(五輪の観客数の問題については)近く発表予定の五輪開催に伴う感染拡大リスクに関する提言で意見を申し上げたい」

と述べるにとどめた。

インド株に続きモスクワ株の脅威も(イメージ)
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   すべては、近く挙兵する「尾身の乱」で明らかにするというわけだ。それにしても、政府やIOCに直訴すると言っていた尾身氏ら専門家の「提言」はどうなったのか。毎日新聞(6月17日付)「東京五輪『感染拡大の予兆あれば無観客に』 尾身氏ら専門家提言へ」が「提言の内容が明らかになった」として、こう報じている。

「提言は、6月18日に政府や大会組織委員会に提出する。見解案によると、会場内の感染対策について、無観客が最もリスクが低いとし、観客数が増えるほど『対策の徹底が難しくなる』と評価した。もし観客を収容するならば、(1)大規模イベントの収容数に関する政府の基準より観客数を厳しくすること(2)都道府県を越えた移動を抑えるため、観客は開催地の人に限定する(3)感染拡大と医療機関のひっ迫の予兆があれば無観客にする――ことを勧めている」

   感染の再拡大が見込まれる7~8月は五輪と夏休みが重なり、全国的に人の動きが活発になるため、感染がさらに広がるリスクがあると指摘。パブリックビューイング(PV)の中止や、応援を主目的にした飲食店での観戦の自粛を提案。自宅でのテレビ観戦を勧めるよう促した。感染拡大の予兆があれば五輪開催中でも、ためらわずに緊急事態宣言を出すよう求めている。

   肝心の「東京五輪の是非」については、「われわれ専門家は五輪の開催について判断する立場にない」としており、開催の是非には言及しなかった。

政権幹部「尾身さんの提言はしょせん作文だよ」

   ずいぶん期待外れの内容だが、「尾身の乱」の実態は菅政権側にはとっくに筒抜けだったようだ。政府側の反応は極めて冷ややかだ。

   東京新聞(6月17日付)が「開催リスクの専門家提言『こういうのは作文』」という身もふたもない見出しで、こう伝える。

「尾身茂会長は政府に提言を出すと表明したが、発表に時間がかかっている。専門家の独自性を保ちながら、政府にも受け入れられ、提言に参加する全員が納得できる内容が求められる。あるメンバーは『こういうのは作文だから。どうとでも読めて、皆が納得できるよう(政府とも)協力してやるのが1番いい』と話す。提言は大筋で完成した。尾身氏は菅義偉首相に手渡し、説明することにこだわっているという。別のメンバーは『あっと驚くような提言は出てこない。(大会後)組織委は解散し、政府は『俺たちは知らない』と言う。第2次世界大戦みたい。誰か責任者がいるわけでもなく突撃している感じ』と皮肉った」

   毎日新聞(6月17日付)「五輪に観客『感染加速』 人出、東京に集中」も、こう皮肉る。

「尾身茂会長は今週にも、東京五輪での感染症対策に関する提言を行う。だが、政府関係者は『参考にはするが、医療の専門家であってイベントの専門家じゃない』と話し、当初方針で押し切る構えだ」

   政府側にとって、「尾身の乱」は鎮圧するにもあたらないようだ。

(福田和郎)

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