五輪開催の是非には触れない尾身氏の提言
これはトンデモない話で、6月17日放送のフジテレビ系情報番組「バイキングMORE」の取材に応じた二木芳人・昭和大学客員教授(感染症学)は、こう憤ったのだった。
「東京五輪中に緊急事態宣言なら、その時点ですぐに中止していただきたい。やはり医療提供体制が非常に心配です。第3波のように東京でも2000人、3000人と感染者が出るようでしたら、お祭り騒ぎどころではなくなってしまいます」
また政府は6月17日、イベントの収容人数に関して、まん延防止等重点措置が解除された地域で1か月程度、観客受け入れの上限を1万人とする方針を打ち出した。
これは明らかに東京五輪を「有観客」で開くことを見越した措置だが、尾身会長はこれも分科会で認めてしまった。
尾身会長は記者団に、
「(1万人の問題は)東京五輪とは関係した話ではない、ということを政府側に確認して了承した。(五輪の観客数の問題については)近く発表予定の五輪開催に伴う感染拡大リスクに関する提言で意見を申し上げたい」
と述べるにとどめた。
すべては、近く挙兵する「尾身の乱」で明らかにするというわけだ。それにしても、政府やIOCに直訴すると言っていた尾身氏ら専門家の「提言」はどうなったのか。毎日新聞(6月17日付)「東京五輪『感染拡大の予兆あれば無観客に』 尾身氏ら専門家提言へ」が「提言の内容が明らかになった」として、こう報じている。
「提言は、6月18日に政府や大会組織委員会に提出する。見解案によると、会場内の感染対策について、無観客が最もリスクが低いとし、観客数が増えるほど『対策の徹底が難しくなる』と評価した。もし観客を収容するならば、(1)大規模イベントの収容数に関する政府の基準より観客数を厳しくすること(2)都道府県を越えた移動を抑えるため、観客は開催地の人に限定する(3)感染拡大と医療機関のひっ迫の予兆があれば無観客にする――ことを勧めている」
感染の再拡大が見込まれる7~8月は五輪と夏休みが重なり、全国的に人の動きが活発になるため、感染がさらに広がるリスクがあると指摘。パブリックビューイング(PV)の中止や、応援を主目的にした飲食店での観戦の自粛を提案。自宅でのテレビ観戦を勧めるよう促した。感染拡大の予兆があれば五輪開催中でも、ためらわずに緊急事態宣言を出すよう求めている。
肝心の「東京五輪の是非」については、「われわれ専門家は五輪の開催について判断する立場にない」としており、開催の是非には言及しなかった。