紳士服大手のAOKIホールディングス(HD)の株価が7営業日連続で上昇し、7日目にあたる2021年6月9日には終値ベースで前日比48円(6.4%)高の800円をつけ、約1年2か月ぶりの高値となった。
もともと市場が縮小傾向にあったスーツは、コロナ禍で在宅勤務が増えたことなどから、さらなる需要減に直面。2021年3月期連結決算は上場以来初の最終赤字を記録した。本業の紳士服だけでなくネットカフェやカラオケ、スポーツジムなど経営多角化で手がける事業も打撃を受けたためだが、ここへきて「悪材料出尽くし」感が出ている模様で、9日の高値の後も大崩れはしていない。
回復に手応え、ファッションとエンタメの2本柱
少し前になるが、5月13日に発表された2021年3月期連結決算を確認しておこう。売上高は前期比20.6%減の1431億円、営業損益は57億円の赤字(前期は66億円の黒字)、最終損益は119億円の赤字(前期は4億円の黒字)だった。
ただ、事業別にみると、主力の紳士服(「AOKI」「ORIHIKA」の各店舗)の「ファッション事業」の売上高は前期比13.2%減の853億円で営業利益は48.1%減ながら14億円を確保した。
一方、ファッション事業に次ぐ規模を持ち、ネットカフェの「快活CLUB」やカラオケの「コート・ダジュール」、24時間営業のジム「FiT24」からなる「エンターテイメント事業」の売上高は前期比16.9%減の484億円、営業損益は51億円の赤字(前期は26億円の黒字)だった。ファッション事業には比較的底堅い収益力があるとも言えそうだ。
ファッション事業は今年3、4、5月と既存店売上高が前年同月比プラスになっている。コロナ禍が直撃した前年を上回るのは当然とも言えるが、着実に回復しているとの印象を投資家に与えているようだ。
エンターテイメント事業も底を打って回復する可能性がある。「快活クラブ」はテレワーク・テレスタディー需要を取り込むべく、WEBカメラの無料貸し出しサービスなどに乗り出しており、「コート・ダジュール」も楽器練習やテレワークなどカラオケ以外の使い方を提案。ワクチン接種の拡大に伴って本来の需要そのものが戻ることも十分見込まれる。