「骨太の方針」賞味期限は切れた......
現実はさらに悲惨。コロナ禍に伴う財政支出の拡大で政府の財政悪化は、さらに深刻化。内閣府が2021年1月にまとめた中長期の経済財政試算では、日本がたとえ高成長を実現したとしても、25年度時点のPBは7兆3000億円程度の赤字が残り、黒字化は29年度にズレ込む見通しが示されたところだ。
ところが、今回の骨太では25年度の黒字化を目指す財政再建目標を「堅持する」と、明記するという。一方で、年度内にコロナ禍が経済財政運営に与える影響を再検証し、それを踏まえて「目標年度を再確認する」とも盛り込み、実質的に目標先送りを示唆する形になる。
なぜ、こんな意味不明な構成になったのか――。
財務省幹部は、
「25年度目標があるから国の財政運営に辛うじて『たが』がかかっている。これを緩めれば予算編成で各省庁から無理な要求が殺到しかねない」
と解説する。
予算編成に向けて「25年度黒字化目標」は堅持するが、予算編成が終われば現実的な目標を再検討するということだろう。骨太がいかに政府の都合に応じた「作文」であるかがわかる。
菅政権は今回の骨太でバラ色の未来を振りまき、今秋までに予定されている総選挙のアピール材料としたい考えだが、骨太に対する国民の関心は皆無に等しい。
骨太が最初に作成されたのは小泉純一郎内閣の2001年。財務省が握っていた予算編成の主導権を官邸に移す切り札として高い注目を集めたが、20年の年月を経て、その賞味期限はそろそろ限界を迎えつつある。(ジャーナリスト 白井俊郎)