前編のCASE 「会議やミーティングへの出席は不要?」をもとに、上司の部下に対する対応のあり方を考えてみましょう。
ポイントは、上司が部下の思いを正しく捉え、価値観を知ること。そのうえで、ハラスメント予防のあり方を定め、日常的に予防することです。
部下の思いを正しく捉える(価値観を知る)
◆ 上司と年上部下Aさんとの会話
参考リンク:「万年ヒラ社員の年上部下に、自己完結できる仕事を任せる〈前編〉」J-CASTニュース 会社ウォッチ2021年6月16日付
(1)仕事で顧客や組織に貢献したい
年上部下の中には、マイナスの評価を受け続け自己肯定感が減退し、「悪いのはすべて自分のせい」と極端に自責の念が強い人もいます。反対に、責任ある立場の経験がないことからも、「うまくいかないのはみな上司や同僚のせい」と、他責思考が目立つ人もいます。
しかし、その態度の裏返しで、できればよい仕事をして認められ、感謝をされたい、働きがいを持ちたいとの思いがあるものです。どこかで奮起し、一歩を踏み出したいけれど、上司や同僚から見放された状態が続くなかでは、挑戦するきっかけがつかめません。
(2)第二のキャリアの見通しを持ちたい
人生100年時代が叫ばれ、70代まで現役延長が現実味を帯びてきました。50代の年上部下は自分が70?80歳まで働くには、今後20年間ほどの「第二のキャリア」を描く必要があります。現在の職場での再雇用か、転職か、あるいは独立か、進路選択も迫られるでしょう。
何とか自分を活かせる場所を見出したい。しかし、どの道をどう選べばよいか、自分一人で見通しをつけるのは容易ではありません。将来への不安や焦りは周囲との溝をさらに深め、今の仕事に専念することも妨げている場合があります。
ハラスメント予防の心構え(あり方を定める)
(1) 自分事として受け止め、相手に寄り添う
じつは、上司にとって年上部下の直面している困難や不安は、決して他人事ではありません。自分もいずれ役職から外れ同じ立場となり、定年後は新たな道を探す必要があります。その時に、自分がお荷物として扱われ、周囲から関心も期待も持たれなければ意欲を失い、心を閉ざしてしまうでしょう。
そこで、一度仕事上の立場を介したメガネを外し、人生の先輩として親身に受け止め、その気持ちに想像力を働かせてみましょう。相手の人生に寄り添う姿勢で接すれば、心を開いてくれるものです。
(2) 一緒に持ち味や強みを探す
そして、本人のこれまでの様々な経験のなかから、一緒に持ち味や強みを探してみましょう。誰しも、必ず得意とする領域や手応えを感じた経験があるはずです。会社での仕事だけではなく、趣味や社会活動での経験でもよいのです。
やりがいを感じ、ワクワクして打ち込めて、成果を実感できたものなど、広く見渡してみましょう。また、その活かし方も職場での活用だけでなく、第二のキャリアへの準備やライフワークにつなげて考えるなど、広く長い視野で見つめてみましょう。
日常的な予防を図る(やり方を変える)
(1) 傾聴と対話で、自己開示し合える関係をつくる
相手に人として寄り添うには、上司の側からコミュニケーションのやり方を変えることがスタートラインです。一度、落ち着いた面談の場を設け、傾聴の姿勢で相手の経験や思いをじっくりと聴き、受け止めます。
また、上司の側からは、自分の仕事上の試行錯誤や悩みも語り、プライベートな話題もできる範囲で自己開示をします。立場を超えた人間同士の関係は、安心と信頼の基礎になります。まず、この関係を築き、心を開き合うことが第一歩です。
(2) キャリア自律を目標に、長い目での支援を行う
面談での対話とその後の打ち合わせで、年上部下の持ち味や強みを発掘できたなら、これを本人の今後のキャリア自律のために磨く視点で仕事の目標を立てましょう。CASEの例なら、本人が担う競合サービス調査の仕事を、顧客や組織への貢献と同時に、本人の第二のキャリアにどう生かすか、本人の自己啓発要素も組み込み、計画し、支援します。
同じ仕事であっても、意味を感じられない孤独な取り組みか、応援してくれる上司のもとでの自分の将来のためのステップか、本人の納得感しだいで、意欲も成果も大きく変わってくることでしょう。(前川孝雄)
※ 職場のハラスメント予防についてさらに詳しく学びたい方、また職場での研修導入を検討される方は、弊社FeelWorksが開発した「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」をご参照ください。