「ダイヤモンド」は脱炭素での撤退戦で競う商社を特集
「週刊ダイヤモンド」(2021年6月19日号)の第1特集は、「商社非常事態宣言」。2週前の「週刊東洋経済」も商社を特集していたので、いま商社で何かが起きているのだろう。
2021年3月期決算で、伊藤忠商事が5年ぶりに首位となる交代劇が起きた。トップを維持してきた三菱商事は業界4位まで順位を落とした。特集では商社が直面する7つのリスクを挙げている。
その一つが「脱炭素での撤退戦」だ。商社にとって、海外の石炭権益や石炭火力発電事業は収益の源泉だった。だが、世界的な脱炭素の流れが到来し、撤退圧力が強まっている。伊藤忠商事がインドネシアで建設中の石炭火力発電所を運転開始直後に売却する方針を固めたことを詳しく報じている。
5大商社の中で、とりわけ石炭火力の比率が高いのが住友商事だ。2040年代後半に石炭火力から撤退する方針を明らかにしたが、進行中のプロジェクトも多い。「石炭火力という足かせを多く抱えている他の商社は、撤退戦の戦績次第で、伊藤忠との差が開いてしまうばかりだろう」と書いている。
二つ目のリスクが「人権リスク」だ。ミャンマーで軍事政権に近いビジネスが「人権侵害に加担している」と批判され、さらに中露、タイなどで第二のミャンマー問題が浮上しているというのだ。
このほかにも「緊迫する米中対立」「止まらない若手流出」「看板部門の凋落」「コロナ禍で明暗」「次の稼ぎ頭不在」というリスクを挙げている。
パート2では、人事制度刷新の大ブームが各社に到来している、と伝えている。キーワードが「若手の抜てき」だ。住友商事では最短で管理職になれる年次を8年から5年に短縮した。また、双日は双日プロフェッショナルという新会社を設立、35歳以上で副業や独立OKという制度を始めた。
就職人気ランキングでは上位を占める商社だが、業務や働き方が大きく変わろうとしている、それを印象づける内容だ。