「脱炭素」のカギを握る金属
「週刊エコノミスト」(2021年6月22日号)の特集は、「EVと再エネ 儲かる金属」。「脱炭素」に向けて世界が走り始めた中で、そのカギを握る金属が注目されているというのだ。
電気自動車(EV)と再生可能エネルギーには、大量のレアメタル(希少金属)とレアアース(希土類)が使われるからだ。「EV100万台を生産するには、リチウムイオン電池の主原料であるリチウムで年7150トン、コバルトで年1万1000トン必要。この量は2018年の日本の内需に匹敵する」という資源エネルギー庁の試算を紹介している。
EV1台に使われる電池はスマホ1万台分、洋上風力の大型蓄電池はEV数万台分の電池が必要だ。リチウムはチリとアルゼンチン、コバルトはアフリカのコンゴ民主共和国など特定の国に偏在しているのが問題になる。日米欧中で電池の争奪戦が起こりそうだという。
リチウムイオン電池のリサイクルでも日本は遅れを取りそうだ。EVの普及が遅れ、市場規模が小さいからだ。
一方、レアアースを使わない技術、代替品にも触れている。大同特殊鋼の子会社ダイドー電子がレアアースを全く使わない「重希土類完全フリーネオジム磁石」を開発。世界で初めてハイブリッド車のモーター向けに実用化され、ホンダのフリードやインサイトに採用されている。トヨタ、昭和電工、日立製作所などの取り組みも紹介している。
また、日本近海で採掘可能なメタンハイドレートが、水素の原料として注目されているという。だが、利用するには、CCS(二酸化炭素の回収・貯留)が必要だ。商用化に向けて政策的な後押しが必要だ、としている。
レアメタルなどが特定の国に偏在している世界地図を見ると、いま盛んに叫ばれているEVと再エネが、危うい綱渡りの上に成り立っていることがわかる。