パワハラやセクハラなどハラスメント防止の法整備が進んでいますが、企業では貴重な人材の採用・定着・育成のためにこそ、ハラスメントが起きにくい組織風土創りが求められます。
多くの上司層は悪気がないにも関わらずハラスメント・リスクを冒しがちです。またハラスメント・リスクを恐れて部下とのコミュニケーションが希薄になる職場も増えつつあります。こうした背景を踏まえて、本連載では管理職や経営者など上司層に向けてハラスメントを予防する上司力について解説します。
「ハラスメントが起きにくい職場を創る」シリーズの第7回と8回では、仕事の付与やコミュニケーションが難しい年上部下への対応CASEから考えましょう。
年上部下を「なんとか丸く収めたい」それが......
◆ CASE 「会議やミーティングへの出席は不要!?」
【上司】「先日お伝えしたとおり、Aさんには今後、競合サービスについて情報収集する仕事をお願いします。方法はお任せしますが、月間スケジュールは事前に提出してください。」
【Aさん】「ではまず、どんな情報が必要か、チームメンバーと関係部署の意見も聴きたいのですが...」
【上司】「そんな必要はないですよ。最もベテランなんですから、まずは自分でできる方法を考えてください」
【Aさん】「しかし、いま何が求められているかがわからないと、作業もムダになるので...」
【上司】「いや、あまり難しく考えないでくださいよ。Aさん一人で完結してもらえれば十分です。みんな忙しいので、互いのロスは省きましょう。どうしても困ったら、私に言ってください。それから仕事に集中してもらいたいので、チームミーティングへの出席も不要です。そのほうが、お互いに無用な気遣いなしでいいでしょう。とにかく自分の仕事に集中してください」
【Aさん】「はあ...?(...窓際で、誰とも話すなということか!...)」
《解説》
上司であるあなたの下に着任したAさんは、50代後半のいわゆる「年上部下」です。いくつかの部署で経験を積んできましたが、人事評価は芳しくなく、管理職登用には至りませんでした。
前部署の直属上司の話では、職務意欲もスキルも低く任せられる仕事がないうえに、何かと同僚に相談を持ち掛けることでチームの生産性向上にブレーキをかけがちで、手に余っていたとのこと。噂を聞いた他の部下たちも戦々恐々です。
上司のあなたは何とか丸く収めようと、新たな仕事を指示しましたが...。