開幕まであと40日を切った東京五輪・パラリンピック。緊急事態宣言下で迎えたくない菅義偉政権としては、2021年6月20日に期限を迎える10都道府県に発令されている宣言を解除したい構えだ。
しかし解除すれば、いかにワクチン接種が進もうと、インド型・英国型の変異ウイルスの猛攻撃を受けるリスクが高まるばかり。いったい、ニッポンはどうなるのか?
政府は「五輪の観客を増やしたい」
「東京五輪・パラリンピックの開催について、全首脳から大変力強い支持を頂いた。主催国の総理として心強く思うとともに、しっかりと開会し、成功に導かなければならないと決意を新たにした」
2021年6月13日、英国コーンウォールでG7サミット(主要先進国首脳会議)を終えた菅義偉首相は、記者団にこう胸を張った。
主要メディアの報道をまとめると、同じころ日本国内でも首相官邸幹部が、
「これで東京オリパラは国際公約になった。もう中止も延期もできない。前に進むだけだ」
と、猪突猛進モードに入ることを強調した。
6月14日に帰国した菅首相は、さっそく新型コロナウイルス対策として10都道府県に発令中の緊急事態宣言について、期限の6月20日に解除できるかどうか関係閣僚と協議した。宣言は北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡、沖縄に出されている。17日に政府対策本部で宣言解除の可否を正式決定するが、唯一、感染者数が最も深刻な「ステージ4」にとどまっている沖縄を除き、解除する方向が大勢だ。
また、9道府県の解除を機に大規模イベントの人数制限を緩和する案も浮上している。もちろん、人数制限の基準に合わせて東京五輪の観客数をできるだけ多くするためだ。
問題は、東京五輪の開幕が1か月後に迫るなか、東京都の感染対策をどうするかだ。東京都などで宣言解除に踏み切る場合でも、飲食店への営業時間短縮の要請は続く見通しだ。政府内には、宣言に準じた対策を取れる「まん延防止等重点措置」に移行させる案が有力になっている。
ただ、東京都の感染者数が下がり切っていないことから、下手に全面解除するとリバウンドの危険性が高く、東京五輪の期間中に感染が拡大しては元も子もなくなる。
NHKニュース(6月14日付)「都内の感染確認7日間平均 前回宣言解除決定時の1.3倍」がリバウンドのリスクを、こう伝える。
「都内で感染が確認された人の数を、前の週の同じ曜日と比べると、先週の金曜日(6月11日)まで1か月近く減少していたが、12日の土曜日は上回った。また7日間平均は、前回(2回目)の緊急事態宣言の解除が今年3月18日に決まった時点の約297人と比べると、6月13日時点では約384人だ。およそ1.3倍となっている。前回は、解除してから3日後に増加傾向となった。ついに5月13日には約934人となり、第4波のピークを迎えた」