開幕まであと40日を切った東京五輪・パラリンピック。緊急事態宣言下で迎えたくない菅義偉政権としては、2021年6月20日に期限を迎える10都道府県に発令されている宣言を解除したい構えだ。
しかし解除すれば、いかにワクチン接種が進もうと、インド型・英国型の変異ウイルスの猛攻撃を受けるリスクが高まるばかり。いったい、ニッポンはどうなるのか?
インド型で東京が1日5500人の感染大爆発に
恐ろしいインド型変異株が、日本でも従来型や英国型変異株に置き換わりつつある。時事通信(6月13日付)「インド型変異株、拡大ペース加速 各地で感染、クラスターも―7月中旬に主流化か」が、こう伝える。
「インド型変異株が拡大している。厚生労働省によると、6月7日時点で確認された感染者は12都府県の87人。同日までの1週間の新規感染者は34人で、前々週21人、前週24人と増加ペースが加速している。7月中旬には新規感染者の過半数を占めるとの試算もある。
慶応大の小崎健次郎教授(臨床遺伝学)らのチームが、インドから直接流入しただけでなく、英国や米国を経由したケースもあるとの解析をまとめた。小崎教授は『変異株は最初の流行地域から直接流入するだけとは限らない。水際対策を強化すべきだ』と指摘する」
東京五輪では、世界200の国・地域から8万5000人が選手や関係者が入ってくる。どんな変異ウイルスが持ち込まれるかわかったものではない。
そんななか、筑波大学の倉橋節也教授(人工知能)が6月14日、「オリンピックおよびデルタ株の感染推移」という東京五輪開催とインド型変異株(デルタ株)の影響をシミュレーションした研究結果を大学のホームページ上に発表した。五輪によってどのくらい感染が拡大するかを、人口の流動やワクチン接種の進行度などを元にAI(人工知能)を使って試算した。
それによると、東京都の緊急事態宣言を全面解除せず、一定の規制(今年1月の2回目の緊急事態宣言相当)を続けることによって、新規感染者数は五輪を開催しても、それほど増加しないで済む。ただし、それは従来型と英国型(アルファ型)の変異ウイルスが流行している場合を想定した場合の試算だ。
感染力が非常に強力なインド型(デルタ型・感染力はアルファ型の1.5倍、ワクチン効果は0.9倍)がまん延するケースを試算すると、新規感染者数は最大で1日5500人(重症者1940人)という爆発的な増加を示す。そのため、新規陽性者が700人を超える7月末に、第4次緊急事態宣言を出す必要がある。それによって感染者のピークを1000人程度に抑えられる。しかし、7月末といえば、オリンピックの真っ最中ではないか。
いずれにしても、東京都の緊急事態宣言の全面解除は論外で、過去の緊急事態宣言並みのしっかりとした対策を続けることが欠かせないということだ。