【6月は環境月間】日本のエコ技術を開発したエンジニアたち

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三菱重工の二酸化炭素吸収材とサッポロビールの水素発酵技術

   地球温暖化対策として、二酸化炭素を回収する技術が注目されている。三菱重工業はすでに1990年から、関西電力と共同で火力発電所から発生する二酸化炭素を回収するプロジェクトに着手していた。まだ、地球温暖化や二酸化炭素が注目される以前のことだった。

   94年に二酸化炭素の吸収材となる「KSI」の開発に成功する。KSIはアミン系の液体でアルカリ性。アミン液は二酸化炭素を吸収しやすいが、分離しにくいという特性がある。約200種類のアミン分子から、KSIができ上がった。

   KSIは地球温暖化対策の大きな柱とされる二酸化炭素回収・貯留(CCS)のキーテクノロジーとなっていく。

   三菱重工業は長崎県西海市にあるJパワー(電源開発)の松島火力発電所で実証実験に成功。ノルウェーの発電所からも引き合いがあった。

   回収した二酸化炭素を油田に注入し、石油採掘に利用する可能性もあるという。この技術は地球温暖化対策が叫ばれる前に日本のメーカーが開発していたことに驚いた。

   サッポロビールのエンジニアが麦芽を一切使わないビール風アルコール飲料の研究から、水素発酵の実用化を進めたストーリーが興味深い。

   最初は会社から認められた正規の開発事案ではない「闇研究」だった。ブラジルのエネルギーメジャーと提携、サトウキビのしぼりかすから、水素をつくる計画だ。リーダーの三谷優さんは「技術者は自己暗示をかけてでも、開発している技術への自身を持つことが必要です。自信を持って、自分が信じたことをやり抜く。常にブラッシュアップしながらです。そうすれば、必ず最先端になれるのです」と語っている。

   本書で紹介された事例のうち、充電池「エネループ」を開発した三洋電機は、その後パナソニックの完全子会社になり、ブランドは消滅した。また、三菱航空機の国産旅客機「MRJ」は事実上、開発が凍結された。技術があっても生き残ることは難しい。本書を読み、改めて厳しい現実を思い知った。(渡辺淳悦)

「国産エコ技術の突破力」
永井隆著
技術評論社
1738円(税込)

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