日本はなぜトップから転落したのか? 統計データが示した「キツイ」現実

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   日本は今、世界でどれくらいの位置にいるのか?

   さっぱり進まない新型コロナウイルスのワクチン接種の状況に、苛立ちながら、国力の低下を憂えている人もいるだろう。本書「日本の構造 50の統計データで読む国のかたち」は、副題にあるように、さまざまな統計データから、日本の「実力」を検証した。

   我々の仕事と生活の実態を知ることが、すべての議論の土台になるだろう。

「日本の構造 50の統計データで読む国のかたち」(橘木俊詔著)講談社
  • 非正規労働者は正社員と比べて年収で60%低い
    非正規労働者は正社員と比べて年収で60%低い
  • 非正規労働者は正社員と比べて年収で60%低い

非正規社員は正社員より年収が60%低い

   著者の橘木俊詔さんは京都大学教授などを経て、現在、京都女子大学客員教授。専門は労働経済学。著書「格差社会」(岩波新書)のタイトルが流行語になったことで知られる。

   日本経済、労働と賃金、生活などの8章からなり、50の項目で構成されている。各項目のタイトルは、「格差」を意識したものが多い。

   たとえば、「男性の賃金、大企業では39万円、小企業では29万円」という項目は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2018年)による。当たり前のように思うが、「企業規模間賃金格差の国際比較」(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」)という国際比較したデータも示している。大企業を100としたときの中小企業値は、デンマークで100.4、イギリスで99.0、イタリアで92.0などとなっており、遜色があまりない。

   「規模間格差は容認されるべきではない」という規範が社会にある、と指摘している。イギリス以外では賃金は経営者、労働組合、政府の三者で全国一律に、中央で決定される、という。逆に規模間格差が目立つのは、日本、ドイツ、アメリカだ。

   労働生産性の違いなどを理由に挙げているが、そうではない国も多いことを知ると、なんなんだろうか? と考えてしまう。

   「非正規社員は、正規より年収が60%低い」という項目でも、うっすらと感じていたことが予想以上の厳しい現実として突き付けられる。国税庁の「民間給与実態統計調査」(2019年)によると、男性の正規労働者(正社員)で年収が561万円、非正規労働者で226万円、女性の正社員で389万円、非正規労働者で152万円である。男女計にするとそれぞれが503万円と175万円となる。非正規の人は正規の人と比較して、年収で男性も女性も60%近くも低いのだ。

   正社員は賃金と昇進における年功制がまだかなり残っていて、働き続ければ賃金増加があるが、非正規労働者では昇給がほとんどないことが、もっとも大きな理由だ。 賃金格差のほかにも、社会保険制度に加入できない、雇用打ち切りの対象になるなど、非正規労働者の格差は深刻だ。

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