半導体はもう一度相場をつくるか
では、それなのになぜ今、半導体なのか――。詳しく説明します。
理由の一つ目は、相場の循環です。2月に米国の長期金利が急上昇を見せ、それに合わせてハイテク銘柄は大きく下落しました。それ以降、コロナ禍からの回復を見越した銘柄に資金が移動したように思えます。たとえば、景気回復に敏感な銅先物や銅鉱株は大きな相場をつくりました。
しかし、その銅の相場も5月中頃に史上最高値をつけて以来、いったん落ち着いています。これは、CPI(消費者物価指数)などの各種経済指標が出揃ったことにより、いわゆるセル・ザ・ファクト(=バイ・ザ・ファクト。事実に基づいて売買すること。投資格言の「噂で買って事実で売る」)になったものと思われます。
このことにより、コロナ禍からの回復を見越した相場はひと区切りがつき、新しい循環に入ったと判断しました。つまり、ハイテク銘柄のターンがまたやってくることで、半導体も新しい相場を作るのではないかと考えました。
理由の二つ目は、市場が金融緩和の縮小(テーパリング)を織り込み始めたことです。2020年からのハイテク銘柄を中心とした相場は、とりもなおさず金融緩和というアトラスの肩にかかっています。肩をすくめられてはひとたまりもありません。
そのことを理解しているFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「テーパリングは時期尚早」という趣旨の発言を繰り返してきました。
しかし5月20日に、一部の担当者がテーパリングの議論を示唆したというニュースが流れました。これによって株価は急落するだろうと思ったのですが、ふたを開けてみるとあまり影響していないという状況でした。
このことから、テーパリングはもう織り込まれ始めたと判断し、ハイテク銘柄を買い始めるのによい時期に入ったと考えました。
最後に、三番目の理由は、「質への逃避」です。
上記の二つは、ハイテク銘柄を今、買うことの理由でしたが、なぜその中で半導体を選んだのかというと、目下の半導体不足というわかりやすい需要があるからです。
コロナの中で大きく成長した企業は、「はたしてコロナ禍以後もこのまま成長していくだろうか」という懸念があります。
そうした中で、より安全な投資対象に資金が流れる「質への逃避」の力学が働くと考え、ハイテク銘柄の中でもわかりやすい需要がある半導体関連がよいだろうと判断しました。