東京五輪・パラリンピック開催まで残り45日を切った。菅義偉首相と国際オリンピック委員会(IOC)は何が何でも開催を強行する構えだ。
焦点は無観客か有観客か。有観客ならどのくらい入れるかに移っている。菅義偉首相はできるだけ多く入れたがっている。
しかし、それは「トンデモなく危険だ」と専門家は指摘するのだが......。
「5000人」「1万人」とバナナの叩き売りか!
東京五輪開催の焦点になっている、観客を入れるかどうか――。国際オリンピック委員会(IOC)は2021年6月9日、理事会後にオンラインで記者会見を開き、東京五輪の観客の上限について6月末までに決めると発表した。
主要メディアの報道をまとめると、実務責任者のクリストフ・デュビ五輪統括部長は、無観客にするか、有観客にするかについては、
「現段階での決定はない。期限は6月末ごろだ」
と述べたのだった。
しかし、観客の問題については、日本側は現在、10都道府県に出されている緊急事態宣言の期限となる6月20日前後に判断する見通しだ。しかも、「観客を入れる」ことが大勢になっているという。
朝日新聞(6月9日付)「『五輪に観客』強気の政府 一時は無観客... ワクチン接種加速で勢い」が「有観客での開催」に前のめりになっている政府の思惑をこう伝える。
「今夏の東京五輪・パラリンピックで、政府や大会関係者の間で『有観客で開催』との主張が勢いを増している。わずか1か月ほど前には、政権内にも『無観客』を受け入れざるを得ないとの空気があった。大会組織委員会の橋本聖子会長は4月28日、『無観客の覚悟は持っている』と発言。官邸幹部も『〈緊急事態宣言でこれだけ我慢して生活しているのに五輪かよ〉という気持ちが国民に広がっている』と、五輪への逆風を前に弱音を漏らしていた」
ところが、4月下旬からワクチン接種が本格化。五輪の準備に向けても、「職域接種が始まれば、五輪に前向きな雰囲気がもっと出る」と強気の言葉が飛び交うようになった。
今のところ、政権内では緊急事態宣言下の「収容人数の50%を上限に最大5000人」との制限に準じた形での開催が検討されている。「1万人」との強気の声もあり、「有観客を前提にどこまで入れられるか」と話す官邸幹部もいるという。
朝日新聞はこう続ける。
「一方、政府のコロナ対策に関わる専門家からは、前のめりの政権にクギを刺す指摘も。専門家が特に懸念するのは『五輪がJリーグやプロ野球と異なり〈特別な祭典〉であること。幅広い客層が競技に熱狂し、人の動きも盛んになる。五輪と普通のスポーツを同一に語れない』。お盆や夏休みと重なり、感染リスクはさらに高まる恐れもある」
コロナ対応にあたる政府の官僚も有観客での開催を不安視する。6月下旬で緊急事態宣言を解除すれば、その後の感染再拡大は免れないと指摘。「五輪は開いて終わりではない。パラリンピックも含めて9月上旬まで続く」と、期間中のリスク管理の難しさを語る。
官邸幹部は「観客を入れ過ぎて、何か起きて非難されるリスクもある」と不安を隠さない。五輪がパンデミックに火をつけたとなれば、国内だけでなく、国際的にも批判を浴びるからだ。