フジテレビ「尾身氏は国民の声を代弁している」
フジテレビ系のインターネットニュース「FNNプライムオンライン」(6月8日付)の「〈五輪は絶対〉の政府と世論の溝 菅首相は『コロナ禍で開催の意義」をどう発信すれば国民の理解を得られるか』」も、フジテレビ政治部首相官邸担当の亀岡晃伸記者が、菅首相に対する厳しい批判記事を載せた。
「去年、安倍晋三前首相がIOCとの電話会談で1年間の大会延期を決めて以来、政府は『五輪は絶対に開催する』との方針の元、開催に必要な対策を感染状況の変化に応じて更新して体制を整えていく姿勢を貫いている。そこには『どういう状況であれば大会を開催しないのか』という判断基準がなく、その必要性を指摘する声も政府内になかった。むしろ去年、安倍前政権の高官が『日本が中止の可能性に言及した途端、開催に向けた流れが一気になくなる』と吐露した危機感が、今も政府内で継続している」
「それゆえ『政府はコロナの感染状況に関わらず大会の開催ありきの姿勢だ』と多くの国民が感じ、政府を信頼し切れていない。尾身会長の今回の発言は、そうした国民の声を代弁して政府の姿勢に疑問を突きつけた。政府は6月20日までが期限の10都道府県への緊急事態宣言を予定通り解除した後も、感染防止策を徹底し続けた上で7月23日の開会式に繋げるプランを思い描く」
亀岡記者によると、政府のホンネは、少なくとも緊急事態宣言下での上限である、収容人数の50%までは観客を入れて開催を目指したい考えだ。だが、「東京大会の成功」に欠かせないのはやはり国民の理解と納得だ。大会まで残り50日を切る中で、政府がどのような発信をしていくかが焦点になってくる。
「10都道府県への緊急事態宣言を解除する際には、菅首相の会見も合わせて行われる。そこで菅首相がコロナ禍での大会開催の意義や開催時のメリットとデメリット、そしてそのデメリットの軽減のために政府が講じる対策を説明し、国民の疑問に対して真正面からの答えを尽くした先にしか、大会開催に向けた世論の機運醸成は望めない。日本国民がどのような形で大会に関わっていこうと思うのか、思わないのか。ぜひ菅首相には国民の不安を払拭するような納得のいく説明を期待したい」
海外メディアの多くが「尾身の乱」を取り上げた。その一つロイター通信(6月2日付)「Adviser frets about Japan Olympics, volunteers reported quitting」(助言者はオリンピックを心配し、多くのボランティアがやめたと報告した)と、「not normal」(普通でない事態)について、こう伝えている。
「政府の最高医療顧問であるシゲル・オミは、これまでで最も強い警告として、『五輪の主催者は、我々がなぜ前に進まなくてはならないのか説明する必要がある』と述べた。彼の発言は何千人ものボランティアが事前にやめたという報告の中で行われた。オミは、東京の緊急事態宣言の中、レストランがアルコールを販売せず、ほとんどの場合、午後8時までに閉店するのに、なぜ、医療体制の破綻を招くお祭り騒ぎをするのか、わかるように説明してほしいと訴えた」
そして、ロイター通信はこう結んでいる。
「穏やかな話し方のオミの異常に厳しいコメントは、首相のスガら主催者たちが『安全で確実なゲームができる』と世界を安心させてきたものとは対照的だった」
(福田和郎)