「五輪中止」の朝日新聞社説を罵倒した産経新聞
こうした菅首相の木で鼻をくくったような対応に、激しく糾弾する社説を掲載したのが産経新聞だ。6月8日付の【主張】(社説)「東京五輪 首相は尾身発言に答えよ スポーツ界の快挙見過ごすな」がそれだ。通常の「主張」の2倍のスペースを使っている。
産経新聞といえば、こと東京五輪に関しては、菅首相の開催強硬路線を一貫して全面的に支持してきた。今年4月以降に感染第4波が拡大、東京五輪中止論が勢いを増した際も、防波堤の役目を果たす論陣を張ってきた。
組織委員会が五輪選手に優先的にワクチンを接種するという動きに出て、世論から「高齢者の接種もまだなのに元気な若者を優先させるのか」と猛反発を受けた際には、「社説:五輪選手の接種 安全開催に国民は理解を」(4月19日付)と擁護した。
感染拡大により「無観客での開催」論が出始めると、「社説:『無観客』の前に手を打て」(5月1日付)と、まだまだあきらめるな!と叱咤激励した。
池江璃花子選手への「五輪中止のために声をあげて」という投稿が問題になると、「社説:五輪批判 選手への攻撃は許せない」(5月16日付)と激怒した。
IOCが日本の五輪選手にもワクチンを供給すると発表したときは、すぐさま「社説:五輪にワクチン『無償提供』を歓迎したい」と、「優先接種か」という批判に気兼ねすることなく、堂々とワクチンを接種せよと呼びかけた。
4度目の緊急事態宣言がさらに延長されると、「社説:東京五輪開催の努力あきらめるな」(5月28日付)と檄を飛ばした。
そして、主要紙では初めて朝日新聞が社説で「五輪中止の決断を首相に求める」として「五輪中止」を打ち出すと、1面のコラム「産経抄」(5月27日付)で「朝日の言い様は、五輪に関わるすべての人たちへの冒涜(ぼうとく)である」と罵倒したのだった。