「ダイヤモンド」は「教師の出世・カネ・絶望」を大特集「東洋経済」は「会社とジェンダー」【ビジネス誌 読み比べ】

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパーソンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

   6月7日発売の「週刊ダイヤモンド」(2021年6月12日号)は、「教師大全 出世、カネ、絶望」と題して、日頃あまり目が届かない教師の待遇について特集している。

   文部科学省は2021年3月、教師の仕事の魅力を広めようと、「#教師のバトン」のハッシュタグを付けたツイッターへの投稿を現場に呼びかけた。

   ところが、以下のような過酷な現場の惨状を訴える投稿が相次ぎ、大炎上した。

「教員採用がザル。だから最近は簡単に教師になって簡単に辞めちゃう」
「1カ月の残業80時間超え(過労死ライン超え)は当たり前」
「公立は残業代ゼロ。給料月額4%の教職調整額だけで『定額働かせ放題』」
「部活指導がとにかく大変。2023年度から外部委託に移行するらしいが、それで改善されなかったら辞める。すでに就職活動を開始した」
  • どうすれば、「勝ち組」教師になれる?
    どうすれば、「勝ち組」教師になれる?
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教員のなり手が減っている!

「週刊ダイヤモンド」2021年6月12日号
「週刊ダイヤモンド」2021年6月12日号

   学校が「ブラック職場」になっていることが知られ、志願者が減っている。公立小学校教師の2020年度の採用倍率は過去最低の2.7倍。優秀な人材が集まらなくなり、質の低下が懸念される。

   現役教師と労組関係者による覆面座談会では、教師の職場に人事評価が導入され、校長への「しっぽ振り競争」が行われている現状を憂えている。

「若い教師はアピールしまくります。勤務時間を超えて何時間も居残って仕事したり、校長に言われれば何でもやる。部活動の顧問も断りません」(首都圏の公立中学校教師)
「今の私立学校では、卒業後にストレートで専任(正規職員)になれる道は細くて、4割が非正規雇用。正規雇用というニンジンをぶら下げられながら働き、合理的な理由もなく雇止めされて学校を転々としています」(労組関係者)

   東京都の公立学校の教師はいくらぐらい給料をもらっているのか――。東京都教育委員会などの情報公開を基に元高校教師で中小企業診断士兼行政書士の木村成氏が作成したデータを披露している。

   1年目の教諭の年収は約398万円、31歳主任教諭で約546万円、副校長になれば50歳ぐらいで年収1000万円に到達する。

   だが、出世に伴う激務を避け、激務になるポストの手前でそれなりの給与水準を得て、教壇に立つのが、出世を望まない教師にとっての「勝ち組」ルートだという。

教師の「勝ち組」ルートとは?

   では、私立学校ではどうか? 高給取りと言われる首都圏の16大学付属校の年齢別年収を公開している。40歳時点のランキングでは、1位早稲田大学1107万円、2位慶応義塾大学1064万円、3位中央大学1048万円となっている。公立に比べ、かなり年収が高い。

   教員を養成する大学の偏差値や就職実績もまとめている。2005年の規制緩和で小学校教師を養成する学部・学科を私立大学が急増したため、私立は偏差値40台から門戸が開かれているという。

   教員就職者数ランキング(2020年)では、大阪教育大、愛知教育大、福岡教育大と国立の教員養成大学がトップ3を占める。私立では文教大学、岐阜聖徳学園大学、日本大学、玉川大学が上位に入っている。特に日本大学は中学校と高校の教員就職者数ではトップに立っている。

   関連で、インターネット授業と通信制高校の制度を組み合わせた角川ドワンゴ学園の「N高等学校(N高)」では、教師1人が150人を担任する過酷な実態であることを報じている。

   今や、教師が「聖職」であると言う人はいなくなった。だが、「人並」の待遇は必要だろう。教師志望の学生に読んでもらいたい特集だ。

第2特集は「全部見せます! タワマン全内幕」
第2特集は「全部見せます! タワマン全内幕」

   第2特集は「タワマン全内幕」。このところ、タワマン人気に水をかける週刊誌の記事が目立つが、ビジネス誌らしくリセールバリュー・ランキングから迫っている。首都圏の1位はシティタワー品川(136%)、関西ではグランフロント大阪オーナーズタワー(110%)が1位に。多くの物件で含み益が多くなっていることがわかる。

   インサイダー座談会でも3年で2000万円の利益を得た売主がいたことや、コロナ禍の影響で、駅から遠くても人気が高くなったことが語られている。オリンピック選手村の建物をマンションとして転用することで話題になった晴海フラッグについても、「売れる要素しかない」として、タワマン人気がまだまだ続くという意見で共通している。「タワマン暴落論」の真実をますます知りたくなった。

女性を戦力化できない日本企業に未来はない

「週刊東洋経済」2021年6月12日号
「週刊東洋経済」2021年6月12日号

   「週刊東洋経済」(2021年6月12日号)は、女性を戦力化できない日本企業に未来はない、として「会社とジェンダー」という特集を組んでいる。生物学的な性差とは異なる、社会的・文化的な性差を「ジェンダー」と呼ぶ。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」で日本は120位だった。日本の順位が低かった要因は政治の147位、経済の117位にある。

   特集では、さまざまな指標で男女格差を指摘。上場企業役員の女性比率は6.2%に過ぎず、女性が上に行けない理由を探っている。一方で、最近ブームになっている女性の社外取締役。外資系の機関投資家が「女性の取締役ゼロ」の企業に対し、株主総会で反対票を投じ始めたのが、その理由だとしている。

   だが、社内から抜擢するのはハードルが高く、社外の弁護士、公認会計士、経営コンサルタント、元アナウンサーなどに白羽の矢が立つ。報酬は年間で1社600~1500万円が相場だという。

   女性の管理職や技術者をこの10年で増やしている、ダイキン工業の井上礼之・取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員は、「能力と意欲がある女性は、男性と同じように修羅場に放り込んで育て、登用していくべきだと伝えている」と話している。その際、出産や育児が女性のキャリア形成のブレーキにならないようにするための、仕事との両立支援をしているという。

   ジェンダーは、企業の外部へのイメージ形成においても重要だ。広告やSNSでの投稿でジェンダーに関する偏見があると炎上したケースを具体的に取り上げている。知らなかったでは済まされず、人権感覚をアップグレードすることが不可欠だ、としている。

   女性学・ジェンダー研究のパイオニア、社会学者の上野千鶴子氏は、現状のままでは消費市場、金融市場、労働市場で差別的企業は選別されると見ている。「男も女も共働きが出来る職場を選ぶ。男女平等型の企業には優秀な男女が集まってくる」と書いている。

「広域転勤があって、妻が仕事を辞めて地方や海外に帯同しなければならない――そんな企業は、労働者からノーを突きつけられる」

   女性をムダ遣いする国は、「ゆっくり二流に堕ちていく」と警告している。

   第2特集のシェアオフィスの「新潮流」では、シンガポール発のシェアオフィス「ジャストコ」が渋谷ヒカリエに開業するなど、拡大するシェアオフィス事情を取り上げている。高給路線のほか、月額賃料が坪3万~4万円と安価な会社が登場したことを伝えている。

   また、貸会議室で急成長してきたTKPが、シェアオフィス子会社をリージャスブランドで展開している。さらに、三井不動産がスタートアップ向けに始めたシェアオフィスは、入居希望者を厳しく審査していることを伝えている。「テナント側もシェアオフィスの質を重視する時代に突入していきそうだ」と結んでいる。

週刊エコノミスト「米国経済を丸ごと買えるS&P500株価指数」

「週刊エコノミスト」2021年6月15日号
「週刊エコノミスト」2021年6月15日号

   このところ、株式投資特集が目立つ「週刊エコノミスト」だが、今週号(2021年6月15日号)でも「最強の投資戦略」を特集している。

   米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏は5月1日、「一般投資家ならば、個別株よりもS&P500株価指数へ投資したほうが賢明だ」と、呼びかけたという。

   S&P500株価指数とは、アップルなど米国を代表する500銘柄で構成する株価指数。2011年初からのパフォーマンスを円建てに換算すると約4.5倍にも上昇。日経平均株価の2.8倍、TOPIXの2.1倍が霞むほどだ。

   常に構成銘柄の新陳代謝を図るなど、その強さの秘密を解説している。びとうファイナンシャルサービスの尾藤峰男氏は「S&P500は、まさに米国経済を丸ごと買える世界最強の指数だ」と話している。

   個別銘柄では、これから狙える米国株8銘柄とコロナ禍でも強い、東洋合成工業、レノバなど日本株7銘柄に言及している。

   特集では、ネット証券各社の手数料やポイント付与などを比較。税制優遇制度、NISAとiDeCoのメリットを強調している。

   また、第一生命経済研究所主任エコノミストの桂畑誠治氏は今後、最重要となる指標は、米雇用と物価統計だと指摘している。米連邦準備制度理事会(FRB)がどこまでの物価上昇を許容するのかが今後の金融政策を左右する大きな焦点になる、としている。

   海外メディアの動向を紹介する「論壇・論調」に、東京五輪に批判的な欧州メディアの報道が取り上げられている。ドイツの日刊紙「ヴェルト」は、「先進国の中で日本ほどワクチンの予防接種が遅れている国はない。原因は日本の官僚主義と、予防接種に対する国民の懐疑的な姿勢がある。予防接種が高い国とは対照的に日本はパンデミック第4波を克服できていない。このような状態で五輪を開催できるのだろうか」と疑問を呈している。このほかのメディアも日本のコロナ「立ち往生」に失望感を表明している。(渡辺淳悦)

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