女性を戦力化できない日本企業に未来はない
「週刊東洋経済」(2021年6月12日号)は、女性を戦力化できない日本企業に未来はない、として「会社とジェンダー」という特集を組んでいる。生物学的な性差とは異なる、社会的・文化的な性差を「ジェンダー」と呼ぶ。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数ランキング2021」で日本は120位だった。日本の順位が低かった要因は政治の147位、経済の117位にある。
特集では、さまざまな指標で男女格差を指摘。上場企業役員の女性比率は6.2%に過ぎず、女性が上に行けない理由を探っている。一方で、最近ブームになっている女性の社外取締役。外資系の機関投資家が「女性の取締役ゼロ」の企業に対し、株主総会で反対票を投じ始めたのが、その理由だとしている。
だが、社内から抜擢するのはハードルが高く、社外の弁護士、公認会計士、経営コンサルタント、元アナウンサーなどに白羽の矢が立つ。報酬は年間で1社600~1500万円が相場だという。
女性の管理職や技術者をこの10年で増やしている、ダイキン工業の井上礼之・取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員は、「能力と意欲がある女性は、男性と同じように修羅場に放り込んで育て、登用していくべきだと伝えている」と話している。その際、出産や育児が女性のキャリア形成のブレーキにならないようにするための、仕事との両立支援をしているという。
ジェンダーは、企業の外部へのイメージ形成においても重要だ。広告やSNSでの投稿でジェンダーに関する偏見があると炎上したケースを具体的に取り上げている。知らなかったでは済まされず、人権感覚をアップグレードすることが不可欠だ、としている。
女性学・ジェンダー研究のパイオニア、社会学者の上野千鶴子氏は、現状のままでは消費市場、金融市場、労働市場で差別的企業は選別されると見ている。「男も女も共働きが出来る職場を選ぶ。男女平等型の企業には優秀な男女が集まってくる」と書いている。
「広域転勤があって、妻が仕事を辞めて地方や海外に帯同しなければならない――そんな企業は、労働者からノーを突きつけられる」
女性をムダ遣いする国は、「ゆっくり二流に堕ちていく」と警告している。
第2特集のシェアオフィスの「新潮流」では、シンガポール発のシェアオフィス「ジャストコ」が渋谷ヒカリエに開業するなど、拡大するシェアオフィス事情を取り上げている。高給路線のほか、月額賃料が坪3万~4万円と安価な会社が登場したことを伝えている。
また、貸会議室で急成長してきたTKPが、シェアオフィス子会社をリージャスブランドで展開している。さらに、三井不動産がスタートアップ向けに始めたシェアオフィスは、入居希望者を厳しく審査していることを伝えている。「テナント側もシェアオフィスの質を重視する時代に突入していきそうだ」と結んでいる。