「商談に繋げるキャッチボール」をイメージする 2つの事例をご紹介!(藤崎健一)

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   前回は、コロナ禍で対面営業ができない中で、商談に繋げるまでの関係作りをオンラインで実践している事例をご紹介しました。

   各社お客様ニーズの度合いに合わせ、3段階のステップで商談までの関係づくりを実践していました。少し、ステップをおさらいします。

●ステップ1
ニーズがまだ顕在化していないお客様へは「ニーズ喚起のためのお役立ち情報」を提供する。
●ステップ2
ニーズが顕在化しているお客様へは「課題解決事例情報」を提供する。
●ステップ3
購買意欲が高まっているお客様への「詳細な商品説明情報」を提供する。

となります。

   とはいえ、「ニーズを喚起させるお役立ち情報」とは、どのような情報なのか? と悩まれる方も多いでしょう。そこで、今回は、「ニーズ喚起の為の情報」に注目し、読者のみなさんに「商談に繋げるキャッチボール」のイメージを持っていただける事例を2 つご紹介します。

  • 「ニーズを喚起させるお役立ち情報」とは……
    「ニーズを喚起させるお役立ち情報」とは……
  • 「ニーズを喚起させるお役立ち情報」とは……

提供する情報を変えながら段階を踏む

【事例1】法令説明をお客様ニーズの喚起に活用した事例

   工場や倉庫用の昇降機を製造販売するD社の事例です。

   営業相手は、工場や倉庫内の物流責任者です。物流責任者が、「最初に知りたい情報とは何か」と検討した結果、業務の安全性と効率性を主要な2項目と考えました。昇降機の安全を規定する法令として、建築基準法と労働安全衛生法があります。

   ところが、インターネット上にはこれらの法令を、わかりやすく解説しているページがどこにもありません。

   また効率性を考えるうえで欠かせないものとして、昇降機設置に関する各都道府県の指導要領が存在するのですが、これを一覧化しているページもありません。D社はこれらの点に着眼し、法令解説と都道府県の指導要領を一覧化しました。

   狙いは的中しました。法令解説ページへの訪問者が急増。「昇降機の法令解説」を検索する中で、初めてD社を知った方々からのアクセスも増えました。

   これらの解説ページでニーズ喚起されたお客様への次なるステップは、「課題解決」の情報です。同社では「よくある質問(FAQ)」と「導入事例」を提示しました。FAQは導入に関する不安の解消に非常に役立ち、「導入事例」は課題解決の提案に直結します。

   そして最後のステップとして、実物を見たい方向けに展示会を案内します。ここでは、自社の工場や倉庫に導入した際のレイアウト図面の無償提供サービスを付加しました。

   

このように提供する情報を「ニーズ喚起」「課題解決」「実物確認」と変えながら段階を踏むことで、対面に依存しない「キャッチボール」が可能になるのです。

   この新しいやり方により、「キャッチボール」できるお客様の数は対面営業と比べ、圧倒的に増加します。また、潜在的お客様との「キャッチボール」を「ニーズ喚起」「課題解決」「実物確認」と明確にしたことで、相手のニーズを正確につかむことができ、対応品質も大きく向上しました。結果として、営業へ引き渡す商談の量も質も向上することになったのです。

同業他社の情報は誰でも気になる!

   次に、授乳設備を製造販売しているE社の事例を紹介します。

【事例2】ヒアリング結果をお客様ニーズの喚起に活用している事例

   母親なら誰もが乳児連れの外出の際、おむつ替えや授乳のできる施設探しに苦労した経験があるはずです。E社の営業の仕事は、授乳設備の販売です。

   やみくもに営業してもまったく成果は上がりません。「待ってました!」と営業を歓迎してくれる可能性は、限りなくゼロに近いのです。E社の営業がとんでもなく難しいということは容易に想像できます。

   しかし、こんな営業シチュエーションでこそ、「ニーズ喚起」の情報提供が有効です。営業相手は、病院・商業施設の設備責任者です。そこで、病院・商業施設が公表している乳幼児コロナ感染症対策を調査し、その結果をまとめお役立ち情報として提供することにしました。

   同業他社の情報は、感染症対策の責任者であれば誰でも気になります。まして乳幼児が多く来館する施設の感染症対策責任者であれば、なおさらです。

   調査結果に関心を示してくれた方には、御礼を兼ねた調査電話をします。

「御社では、施設の増改築計画はあるか、その時期は何時か」

などをヒアリングしたうえで、今後も継続的に情報を提供しても良いか、という許諾を獲得します。

   許諾を得たお客様には、メールで継続的に情報を提供し、関係を構築する糸口にすることができたのです。そして最後に、この関係ができた先に対して、ヒアリングで聞き取った増改築のタイミングを見計らってタイムリーな営業提案へ繋げることができるようになったのです

   やみくもに営業するのでなく、相手に有用な情報は何を考えて提供し、それに反応した相手との関係づくりに発展させ、さらにお客様の状況を把握しつつベストなタイミングで営業を仕掛けるのです。

   商談に繋げるまでの「キャッチボール」の量と質を向上させた好事例と言えるでしょう。

   次回は「オンライン営業を阻む要因」について、解説します。

※株式会社カレンの藤崎健一社長が6月に展示会の減少に対応するオンライン営業のあり方について、無料のWEBセミナーを開催されます(同じ内容で3回開催)。日時、詳細およびお申し込みはこちらからお願いいたします。
大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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