シンクタンク大手、三菱総合研究所の株価が2021年5月31日の東京株式市場で一時、前週末終値比360円(8.5%)安の3860円まで急落し、年初来安値を更新した。
前週末に、キリンホールディングスや三菱製鋼など三菱グループ12社が保有する三菱総研株、計155万6600株(自己株式を除く発行済み株式の9%超に相当)を売り出すと発表したため、需給の悪化懸念が広がった。
「コーポレートガバナンス(企業統治)」強化を目的とするとしており、同様の動きが連鎖する可能性もありそうだ。
三菱創業100周年でグループ各社が共同出資
まず、三菱総研とはどういう会社かを確認しておこう。手がける事業は、官公庁や金融機関など向けに調査・分析、政策提案などを実施するシンクタンク・コンサルティングサービスと、ソフトウェア開発などを行うITサービス。
2020年9月期連結決算の売上高920億円のうち、シンクタンクは345億円、ITサービスは574億円、経常利益83億円のうち、シンクタンク52億円、ITサービス30億円という内訳になり、利益面ではシンクタンクの寄与が大きい。
設立は1970年。「三菱創業100周年事業」としてグループ各社が共同出資した。2009年に東証2部に上場し、翌10年に東証1部に移った。現在の社長は、旧三菱銀行出身者が務めている。2021年3月末の大株主は三菱商事と三菱重工業が各5.93%、三菱電機5.49%、三菱ケミカル5.07%など、三菱グループの主だった会社が並ぶ。
今回株式を売り出すのは、その多い順にキリンホールディングス、三菱製鋼、三菱ケミカル、三菱マテリアル、三菱地所、AGC、ニコン、三菱瓦斯化学、三菱倉庫、ENEOSホールディングス、三菱化工機、日本郵船――となる。三菱グループの主要企業ではあるが、大株主の上位に名を連ねる「御三家」のような会社は入っていない。
売り出し価格は6月8~10日の終値をもとに決める。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が主幹事社となり、需要状況に応じて20万株を上限に追加の売り出しを行う。