ソニーと明暗を分けたのは......
オンキョーの2021年3月期連結決算は88億円の売上高に対して58億円の最終赤字に落ち込み、2年連続の債務超過に。東京証券取引所の規定により、ジャスダック上場のオンキヨーホームエンターテイメントは7月末ごろに上場廃止となる。祖業の売却を「止血策」にして、これで得た資金でテレビ向けや自動車向けのスピーカーを他社ブランドで製造・供給する事業に注力するとみられる。
同じAV機器メーカーでは、北米向け液晶テレビを主力とする船井電機が、出版事業を手掛ける秀和システムホールディングスの傘下に入ることが決まった。株式公開買い付け(TOB)が成立したためで、船井電機の創業者の長男で、筆頭株主の船井哲雄氏が秀和システム側に持ちかけたと報じられている。
液晶テレビは販売価格が下落傾向だが、外部から仕入れる液晶パネルの価格は上昇しており、経営状態が悪化。上場を廃止して新たな経営体制で立て直しを図ろうとしている。
ウォークマンを世に送り出したソニーグループは、音楽や映像、ゲームを事業に取り込み、もはや「メーカー」という枠組みでは語れなくなっている。ソニーの好業績と対照的に、かつて一世を風靡したAVメーカーの凋落は、機器を製造するだけでは生き残れなくなった厳しい実態を示していると言えよう。(ジャーナリスト 済田経夫)