2021年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行で職場の高齢化が進むなか、増える再雇用者の働き方を調査したところ、再雇用前とほぼ同じ業務に就きながらも収入が4割下がるなど、モチベーションの低下につながる実態が明らかになった。企業の人事課題を研究するパーソル総合研究所が5月28日に発表した。
シニア従業員3000人のうち、フルタイム、パートタイム、嘱託を合わせた591人の定年後の再雇用で働く人に、再雇用後の年収の変化を聞くと約9割が「年収が減少した」と答えた。
年収は、全体で平均44.3%の低下。また、50%程度(半減)下がった人は22.5%、50%超下がった人は27.6%で、約5割の再雇用者の年収が半分以下に減っていた。定年前とほとんど変わらない人は8%、定年前より上がった人は2.2%だった。
シニア向け教育・研修、「充実」2割
調査では、職務の変化についても聞いた。再雇用者全体の55.0%と過半数の人が「(定年前と)ほぼ同様の業務」と回答。そう回答した人に年収の変化を聞くと、平均で39.3%の低下。「同じ業務」に就いているにもかかわらず、収入が約4割減っていた。
パーソル総合研究所は、
「同一労働同一賃金やシニア人材のモチベーションの観点から問題と言える」
と指摘する。
調査では、シニア社員向けの教育・研修についても聞いた。55~69歳の1572人が回答。それによると、50.7%が「実施されていない」と答え、また29.8%が「実施されているが、充実していない」と答えた。
「実施されており、充実している」と答えたのは19.5%で、約2割しか満足していない結果となった=下の円グラフ参照。
「教育・研修は、就業環境の変化に伴うシニア人材の学び直しや職務との適合性、意欲の引き出しの観点から重要」と同研究所はみており、「現状は不十分と言える」と指摘している。
シニア人材について、パーソル総合研究所・上席主任研究員の小林祐児氏は「シニア人材の可能性を生かすことを考え、法改正への表層的な対応に終わらせることなく、人事制度や各種施策全体を見直していく必要がある」とコメントした。
なお調査は、2021年1月6日~12日に実施。従業員100人以上の企業(第一次産業を除く)に勤務する全国のシニア従業員3000人(正社員2409人、再雇用でフルタイム375人、パートタイム94人、嘱託122人。50~54歳の男性365人と女性691人の1056人、55~59歳の男性385人と女性388人の773人、60代の男性750人と女性421人の1171人)から、有効回答を得た。