パタハラの歯止め役に
大きなポイントのもう一つは、企業に対して、妊娠や出産を申し出た従業員(男女とも)に育休取得の働き掛けや制度の説明をしたりすることを義務付けること。企業がこれらの働きかけを怠った場合には社名を公表することがある。男性が育休の取得を前向きに検討できるよう職場環境を整備するのが狙い。これまでの状況から必要な情報提供と取得奨励を行う必要があると考えられたためだ。
厚生労働省が2021年4月に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去5年間に育休を取得しようとした男性のうち26.2%と4人に1人の割合で「パタニティーハラスメント(パタハラ)」被害に遭っていたことが判明。その原因になったことは、育休取得が49.6%とほぼ半数で、次いで「残業免除、時間外労働・深夜業の制限」を求めたことが38.9%。制度があっても利用しにくい現状が示された。
ハラスメントは、「上司による、制度等の請求や利用を阻害する言動」(53.4%)が最も高い割合。次いで「同僚による、繰り返しまたは継続的に制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」(33.6%)だった。報告書によると、こうしたパタハラ経験者の42.7%が育休の利用をあきらめた経験があった。
新しい法律による取得働き掛けの義務付けは22年4月から。23年4月からは、従業員が1000人を超える企業には、男性の育休取得率を毎年公表するよう義務づける。