新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が続くなか、東京都と百貨店との「摩擦」が表面化した。
東京都の休業要請に対し、百貨店側が5月に入り「生活必需品」の範囲を広く解釈して売り場を徐々に拡大。これに対し都が「圧力」を強めたのだ。緊急事態宣言の再延長に伴い、都は6月から措置を緩和し、平日だけは通常営業に戻せたものの、百貨店の不満はくすぶったままだ。
「生活必需品」とは? 「豪奢品」ってなんだ!
東京都は2021年4月からの緊急事態宣言により、百貨店など大型商業施設に休業を要請した。ただ「生活必需品」は例外で、百貨店は食品など一部の売り場に限定して営業を続けてきた。
しかし、5月の大型連休明け以降、百貨店は次第にバッグや靴などについても「生活必需品」ととらえ、売り場を再開する動きが出てきた。高島屋が5月中旬、「生活必需品」の範囲を衣料品などにも広げ、通常に近い形で営業を拡大すると、そごう・西武や三越伊勢丹ホールディングス(HD)などもこの動きに連動し、なかには「グッチ」や「ルイ・ヴィトン」など高級ブランドの売り場を再開する動きも起きた。
こうした状況に東京都は黙っておらず、小池百合子都知事名の要望書を日本百貨店協会に送り、「高級衣料品など豪奢(ごうしゃ)品は生活必需品ではない」として、休業要請に応じるよう強く求めた。
しかし、「豪奢品」という、通常は百貨店でも使われないような言葉をわざわざ使ったことに、百貨店側は都への疑念を強めた。「まるで悪者のような印象を与えている」というわけだ。
そもそもコロナ禍が長引き、百貨店の経営状況は非常に厳しい。日本百貨店協会が5月末に発表した5月前半(1~17日)の主要百貨店の売上高は、コロナ禍前の2019年比で約55%減と大幅に落ち込んだままだ。