輸入がダメなら国産があるじゃないか!
日本はコロナ禍で20年度の新設住宅着工戸数は前年度比8.1%減の81.2万戸(うち6割が木造住宅)にとどまり、20年の木材輸入額は12年以来8年ぶりに1兆円を下回った。ここまでは需要の落ち込みだが、ここにきて、世界的な供給不足、価格上昇の中で、日本の最大の輸入相手である欧州連合(EU)産木材が米国に持っていかれるなど、「買い負け」の状況という。
コロナ禍の終息をにらんで需要の急回復を期待した住宅業界は、価格上昇と材料難のダブルパンチを被った格好だ。
一般に、木造住宅の建設費のうち木材は1割程度を占めるといい、その値上がり分は数十万円。価格に転嫁すれば需要を抑えかねず、転嫁できなければ利益が圧迫される。木材の調達に手間取り、工期が伸びる懸念もある。
輸入がダメなら国産があるじゃないかと、誰もが思うところ。日本は国土の3分の2を森林が占める「森林資源大国」なのだから、期待が高まるところだが、事は簡単ではないようだ。戦中・戦後の大量伐採で山は荒れ、植林を進めたが育つまで時間が必要なことから輸入木材が増加した。2002年に木材自給率は19%まで低下し、その後は回復に転じ、19年は38%になっている。ただ、森林地域の多くが過疎化、高齢化で担い手不足にあり、生産を急に増やすのは難しいのが実態だ。
木材は、住宅産業の視点だけでなく、自然環境、地球温暖化との関係でも注意深く見る必要がある。生物の多様性を支え、CO2(二酸化炭素)など温室効果ガスを吸収する森林が年々失われている。
日本は2050年に温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目標に掲げている。植林と伐採の長期の生産体制を国内で確立していくことは、木材の需給の安定だけでなく、輸入材と比べた運搬距離の短縮を含め、CO2削減に資する。
「ウッドショック」が日本の林業見直しの契機になるか、注目したい。
(ジャーナリスト 白井俊郎)