日本製鉄は、日本で最大手の鉄鋼メーカーであり、製鉄事業、エンジニアリング事業、ケミカル&マテリアル事業、システムソリューション事業の4つの事業を有しています。
売上高の80%以上を製鉄事業が担っており、そのうち国内向けが約6割、残りを海外の売り上げが占めています。
世界の鋼材需要は回復傾向
昨年(2020年)は、国内自動車向けの鋼板需要の減少や、中国の景気下支え策による鋼材市況安に苦しめられていましたが、今年は需要が回復し業績の見通しも明るくなっています。
その理由の一つは、コロナによって減少した鋼材需要は回復傾向に向かっており、これは2021年、2022年と続いていくと考えられているからです。国内事業の再構築や、欧州アルセロール・ミタルや中国・宝武鋼鉄集団との激しい技術開発競争が課題となっていますが、短期的な投資においてその影響は限定的だと考えています。
同社は、ESG(社会的責任投資)を意識した取り組みも行なっています。ESG投資は最近、世界的な大きな流れになっています。ESG投資とは財務情報だけでなく、環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governanceの要素も考慮した投資のことで、主に世界の年金ファンドなどが企業評価の新たな指標として採用し始めています。
日本製鉄もこのような流れを受けて、カーボンニュートラルに向けた取り組みを始めており、2030年に二酸化炭素(CO2)総排出量の30%削減、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指しています。
ESGによる風当たりが強くなる鉄鋼業界ですが、従来の生産工程を抜本的に見直し、「水素還元製鉄」など高炉を使わない製鉄技術をいち早く商業ベースで確立することができれば、世界からESGマネーを集めることができます。
こういった思惑が渦巻く中で、世界では熾烈な技術開発競争が行われています。