日本でレジ袋の有料化が始まって、もうすぐ1年。プラスチックごみ問題へ意識を向けるきっかけとして期待された政策ではあったものの、折しもコロナ禍という逆風の中でのスタートでした。
開始から半年後の環境省の調査では、レジ袋をもらわない人が2倍に増えるなど一定の効果を見せてはいるものの、この政策に疑問の声が投げられているのも事実。消費者のライフスタイル変革にはまだまだ遠い印象です。
一方で、そんな状況もどこ吹く風と言わんばかりに、プラスチックごみ削減に向けて、環境政策を推し進める国があります。そう、環境先進国と呼ばれるドイツです。
ドイツ「レジ袋禁止」の衝撃!
現在、ドイツでは、連邦環境省とドイツ小売業連盟との任意協定によって、小売店にレジ袋の有料化を義務づけています。
2016年から進められてきた有料化によって、ドイツ国内の年間消費量は48億枚(2015年)から15億枚(2019年)へと着実に減少。この数をゼロにすべく、連邦議会は2020年12月にレジ袋禁止の条項を盛り込んだ包装法の改正案を可決。2022年1月からレジ袋の取り扱い自体が禁止となりました(ゴミ袋や生鮮品を包む薄手のビニール袋は対象外)。
しかも、日本では有料化の対象外となっている、地球にやさしいとされるバイオプラスチック製や生分解性のレジ袋も、環境負荷が高いとして禁止対象に。多くのスーパーでは、すでに有料の紙袋や厚手のショッピングバッグに切り替えており、連邦環境省は繰り返し使えるエコバッグや、カゴなどの利用を推奨しています。
そもそも、日本人に比べると環境意識が高いと言われているドイツ人。4月に発表された最新の環境意識調査でも、如実にその結果が表れています。
この調査は、連邦環境省と連邦環境庁が2年ごとに実施している、14歳以上のドイツ市民を対象としたオンラインアンケートによるもの。それによると、新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた2020年においても、環境や気候変動への対策が依然としてトップテーマであることがわかりました。
具体的には、さまざまな社会的課題をどれだけ重要だと思うか、という質問に、65%の人が「環境・気候保護」を「とても重要である」と回答したのです。これは2018年の調査結果と同様の高い水準で、「教育システム」(78%)、「医療システム」(73%)、「社会正義」(66%)に次ぐトップテーマ。コロナ禍にもかかわらず、「パンデミックの状況」がとても重要と答えた回答者の割合は、これらすべてのテーマを下回る結果(62%)となりました。
続々と決まるプラスチックごみ削減法案
レジ袋の禁止以外にも、生活のさまざまなシーンでプラスチックごみ削減に向けた動きが加速しているドイツ。すべての使い捨てペットボトル容器にデポジット(預り金)が課金され、回収が促されるようになることや(2022年施行)、飲食店やカフェでは繰り返し使うことのできるリターナブル容器やリターナブルカップの提供が義務づけられること(2023年施行)がすでに決定しています。
直近では、今年の7月からカトラリーや皿、飲料用ストロー、マドラー、綿棒、風船の芯などの使い捨てプラスチック製品が禁止となります。発砲スチロール製のテイクアウト容器や飲料用カップも禁止対象となるため、すでに多くの飲食店では紙製や、リサイクル可能なプラスチック製の容器に切り替わっています。
これは、使い捨てプラスチック製品の流通を禁止するEU指令によって、加盟国が2021年7月までに義務づけられた国内法制化に対応するもの。奇しくも、日本のレジ袋有料化からちょうど1年のタイミングで、欧州ではさらに踏み込んだ規制へと変革を進めることとなります。
もし、日本国内で有料化の成果が問われるのであれば、これらの事例を踏まえ、前向きな議論を進めてほしいものです。(神木桃子)