コロナ禍で、テレワークやオンラインで仕事をする企業が増えてきたこともあり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が、注目されています。
政府もDXを推進するために足かせになってきた「制約」を排除する動きが出始めているといわれていますし、コロナ禍でDXの広がりに加速度がついているようです。
ITジャーナリストの久原健司さんに、日本でDXを進めるための方法について聞きました。
生き残りを懸ける意気込みでやる!
◆ 日本でDXを進めるためにはどうしたらいいのでしょうか日本でDXを進めるための方法を考えるにはまず、日本企業の特性について知ることが大切です。
日経BPコンサルティング・周年事業ラボの調査によると、創業年数が100年以上、200年以上の企業数を国別に調査した結果、日本は共に企業数で世界1位でした。なんと世界の創業100年以上の企業のうち、半数近くが日本の企業で、創業200年以上の企業では、その比率は65%まで上がるのです。
この結果から、日本の企業は堅実経営の考えが強く、経営変革のためにチャレンジする場合であっても、失敗することはもちろんのこと、有事がやってきても大丈夫なようにカバーできる範囲でチャレンジする傾向が、日本の企業は他の国の企業よりも強いのではないか、と考えます。
DXの定義として、経済産業省で
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
と記載しているとおり、「変革し競争上の優位性を確立する」ことが必要になりますので、DXを進めるためには、それ相応の投機的リスクは仕方がないと考えることが重要です。
チャレンジして会社が倒産・破産してしまうようなことがあってはならないことですが、DXを本気で進めるのであれば、会社の生き残りを懸けるくらいの意気込みを社内で持たなければいけないと考えています。
そういった意気込みを持つ企業の芽を摘まないためにも、日本企業や国民全体がDXに対して正しい知識を得ることと、DXに対するポジティブな考えを持つことで、DXを積極的に行う企業に対して、積極的に政府が応援してあげる環境を整えることも重要であると考えます。
経営陣が率先してDXプロジェクトを推進
◆ 日本でDXが進んだと言えるのは、どういった状況になったときでしょうか?DXには「守りのDX」と「攻めのDX」があります。
NTTデータ経営研究所では「守りのDX」と「攻めのDX」を、次のように定義しています。
「守りのDX」は、自社でコントロールできる改革的なテーマとして、業務処理の効率化・省力化、業務プロセスの抜本的改革・再設計、経営データ可視化によるスピード経営・的確な意思決定と3つの定義があり、ひと言で表すと「経費削減」がテーマとなっています。
一方、「攻めのDX」は顧客を中心としたステークホルダーや自社だけでなく、エコシステムをも巻き込むテーマとして、「既存の商品・サービスの高度化」や「提供価値の向上、顧客接点の抜本的改革」、「ビジネスモデルの抜本的改革」と3つの定義があり、こちらもひと言で表すと「売り上げ拡大」といったテーマとなります。
「守りのDX」のほうが「攻めのDX」に比べて、イノベーション達成難易度が低く、日本の企業が比較的なじみの深いことから、まずは「守りのDX」に取り組み、生産性を向上することで、一人当たりGDP(国内総生産)が上がればDXが進んだと言える状況になるとではないでしょうか。
もちろん、「攻めのDX」も行わなければ、米国の主要IT企業であるGAFAのような企業が生まれないので、なかなかDXは進んでいないと評価する人もいると思いますが、「攻めのDX」で成功することは簡単ではなく、マーケットに対しても日本国内だけではなく世界に目を向ける必要があると考えますので、急がず自分たちのペースで進み続けることのほうが現時点では重要だと思います。
世の中の激しい変化に対して、DXを活用し変化し続けることは、企業が衰退したり倒産したりしないためにも必要なことであると考えられています。
しかしDXを進めることは簡単ではなく、失敗もつきものであるといった認識を、経営者だけではなく、社内全体が共通の意識を持つことがとても重要です。
業種や職種、経営状況によって予算は異なるかもしれませんが、まずはDXを行ううえで必要な予算を決め経営陣が、直接DXのプロジェクトを推進するか、そうでなければDX担当者に権限を譲渡し、失敗を許容してやり続ける覚悟を決めることが大切です。 国が推進していることで多くの助成金も出ていますから、これを十分活用してリスクを抑えながら、進めることができると思います。
(久原健司)