経営陣が率先してDXプロジェクトを推進
◆ 日本でDXが進んだと言えるのは、どういった状況になったときでしょうか?DXには「守りのDX」と「攻めのDX」があります。
NTTデータ経営研究所では「守りのDX」と「攻めのDX」を、次のように定義しています。
「守りのDX」は、自社でコントロールできる改革的なテーマとして、業務処理の効率化・省力化、業務プロセスの抜本的改革・再設計、経営データ可視化によるスピード経営・的確な意思決定と3つの定義があり、ひと言で表すと「経費削減」がテーマとなっています。
一方、「攻めのDX」は顧客を中心としたステークホルダーや自社だけでなく、エコシステムをも巻き込むテーマとして、「既存の商品・サービスの高度化」や「提供価値の向上、顧客接点の抜本的改革」、「ビジネスモデルの抜本的改革」と3つの定義があり、こちらもひと言で表すと「売り上げ拡大」といったテーマとなります。
「守りのDX」のほうが「攻めのDX」に比べて、イノベーション達成難易度が低く、日本の企業が比較的なじみの深いことから、まずは「守りのDX」に取り組み、生産性を向上することで、一人当たりGDP(国内総生産)が上がればDXが進んだと言える状況になるとではないでしょうか。
もちろん、「攻めのDX」も行わなければ、米国の主要IT企業であるGAFAのような企業が生まれないので、なかなかDXは進んでいないと評価する人もいると思いますが、「攻めのDX」で成功することは簡単ではなく、マーケットに対しても日本国内だけではなく世界に目を向ける必要があると考えますので、急がず自分たちのペースで進み続けることのほうが現時点では重要だと思います。
世の中の激しい変化に対して、DXを活用し変化し続けることは、企業が衰退したり倒産したりしないためにも必要なことであると考えられています。
しかしDXを進めることは簡単ではなく、失敗もつきものであるといった認識を、経営者だけではなく、社内全体が共通の意識を持つことがとても重要です。
業種や職種、経営状況によって予算は異なるかもしれませんが、まずはDXを行ううえで必要な予算を決め経営陣が、直接DXのプロジェクトを推進するか、そうでなければDX担当者に権限を譲渡し、失敗を許容してやり続ける覚悟を決めることが大切です。 国が推進していることで多くの助成金も出ていますから、これを十分活用してリスクを抑えながら、進めることができると思います。
(久原健司)