「大学対抗 1万円からはじめる暗号通貨バトル」に5大学6人が参戦する。AグループとBグループに分かれた6人の学生トレーダーが6か月間の勝負に挑む。折しも、暗号通貨の代表格、ビットコイン相場は大きな下落を経験。波乱含みのスタートだ。
コロナ禍の不安定な経済情勢に株式市場や外国為替、商品相場に、投資家たちのさまざまな思惑がからみ、暗号通貨市場は翻弄されそう。そんななか、手元の1万円をどこまで増やしていけるのか――。
Bグループは、北海道大学、慶応義塾大学、明治大学が競う。さっそく、北大の渡部真人さんと明大のakiさんが動いた。
ビットコイン、日経平均株価と似た状況(北海道大学 渡部真人さん)
◆暗号通貨「市場」の現状
暗号通貨に投資するものにとって、2021年5月19日は一つのターニングポイントであっただろう。ビットコインが前日比30%下落した。米テスラのイーロン・マスクCEOの発言と中国人民銀行の警告によるものだと推測するが、結論から言えば、暗号資産には投機的風潮が強い。
韓国では若年層を中心に暗号資産への投資で「一攫千金」を狙う人たちが多いという。いまだに価値の裏付けがされていないまま市場が膨張している。
しかし、米国の大手金融機関が暗号通貨事業に参入しており、一時の流行では終わらないのは確かだ。暗号通貨を信じるものにとっては、中央銀行の通貨発行によるインフレリスクや為替相場を気にしなくて済む。米テスラの大規模なビットコインの購入に代表されるように、たしかに投機的感触は否めないが、米ドルへの嫌気から暗号通貨の本格導入を考える国があってもおかしくはない。
私は、5月19日時点で暗号通貨の投機的傾向は一服したと考えている。昨年(2020年)の米国の大統領選挙の時には日経平均株価が3万円台に躍り出た。バイデン氏が優勢になるたびに日経平均株価は上がり続けていたが、バイデン政権が確立し落ち着いてくると日経平均株価は途端に下がり続け3万円台どころか、2万9000円台に上れるかも怪しい。
投機的な傾向があった証拠である。5月19日時点でビットコインは急落したが、再び持ち直した。日経平均株価と似た状況である。今後、乱高下する可能性はあるが、今回の仮想通貨バトルでは、チャートだけでなく、各国中央銀行の動向や世界情勢を鑑みて判断する必要があるだろう。
◆現段階の状況について
暗号通貨バトルのルール上、元本は1万円スタートで20%の損失で退場となってしまう。2000円のロスを早くも出さないために、5月19日時点で4000円の投資を始めた(すぐさま半分以下にならないだろうという推測である)。
取引所はビットフライヤー(比較的送金しやすいのとチャートが見やすいという理由で選んだ)で、「ネム」と「バット」を選択しそれぞれ2000円ずつ購入した。
理由は、その二つの暗号通貨のチャートが対照的であったからである。ネムは2021年3月時点で最高値を出したあとは下降ぎみで、バットは高値圏を維持している通貨である。
この二つのチャートのどちらが今後伸びるのか、今回初めて仮想通貨を購入するので手探りで進めていこうと思う。もっとも、残り6000円については現在、暗号通貨離れの傾向があり、米国株などに資金が流れているので「一服」した時点で通貨を選定し順次購入していきたい。
現在、ネムとバットを保有。5月29日13時45分時点で マイナス919円の含み損である。
◆児山将のワンポイントアドバイス
多くの人がビットコインかイーサリアムの取引を行うと思いきや、時価総額が1000億円程度のアルトコインを選択されています。ネムはシンボルへと移行しており、新しい暗号通貨が国内で取り扱われることも検討されているようです。バットは、順調にブラウザのユーザーを増やしており、またビットフライヤーとのウォレット連携のニュースもあります。ビットコインよりも爆発力が期待できるため、反発気味の暗号通貨相場の継続を期待して良ですね。一時、10兆円規模に落ち込んだ売買代金が13兆円程度に増加しており、このあたりも反発の判断材料とできるかと思います。
保有する暗号通貨 ネム、バット
1万円からの損益 マイナス919円
5月28日現在 9018円
まずは状況の把握から......(慶応義塾大学 1028さん)
5月29日(土)
今週から6か月間、暗号通貨取引に挑戦させていただきます。自分は投資をはじめばかりで、経験と呼べるものはほとんどないのですが、この大学対抗戦への参加をきっかけに暗号通貨について実践的に学んでいき、その成果をこれからの記事で共有できたらなと思っています。
よろしくお願いします!
......と意気込んだなか、初週から申し訳ございません。じつはまだ口座の開設が完了しておらず、取引ができません。(汗)
6月1日週までには必ず、口座の開設を済ませて取引をはじめます。
ですので、今週は暗号通貨に関わるニュースで、私が着目したものを2つピックアップしてご紹介したいと思います。
今週の暗号通貨にまつわるニュースの見出しには、穏やかでないモノが並んでいますね。5月26日の日経速報ニュースに掲載された記事:「ビットコイン、突然の乱高下 未熟さ映す - 変調 仮想通貨 上」では、今年5月に入ってからビットコインが記録的な急落をはじめ、1か月の価値の下げ幅が3割を超えていると報じられています。
下のグラフは、ビットコインの月ごとの価値の変動を表しています。5月に入っての動きが顕著に出ていますね。
(出典:https://ccrashinban.com/images/ccrashinbanimage/000/000/2/2017/ccrashinbanimage_2017.jpg?d=202105280813)
この急落は、ビットコイン(BTC)にとどまらず、イーサリアム(ETC)やリップル(XRP)など他の暗号通貨にも波及しています。
同じく日本経済新聞の記事「仮想通貨、波乱要因に、ビットコイン一時30%下落→NY株続落、機関投資家の参加が背景に」(5月21日付朝刊2面)、「中銀を敵に回した仮想通貨 ―迫る規制と価格下落の足音」(日本経済新聞朝刊 5月28日付7面)では、その急落の原因として、中国の中央銀行である中国人民銀行が、各金融機関に対して暗号通貨を決済に使用しないように通告したこと、欧州中央銀行も同じように暗号通貨のリスクに対して警鐘を鳴らす声明を発表したこと、つまりは中国や欧州が暗号通貨に対して警戒を強め、規制を強化したことを挙げています。
暗号通貨の先の読めない激しい値動きは今後も続いていくのではないかと予測されています。このニュースから読み取れる全体市況から鑑みるに、暗号通貨の運用には厳しい状況が続くようにも思えますが、なんとか自分なりの最適解を見つけたいですね!
BTCやETHなど、各暗号資産の今後の値動きに注目です。
もう一つ、おもしろそうなニュースを見つけたのでご紹介いたします。こちらは日経産業新聞の記事「『NTF』、新たな経済インフラに、仮想空間で台頭、『本物』保証」(5月24日付2面)は、非代替性トークン(NFT)というデジタルデータについてです。読者のみなさまは、この非代替性トークン(NFT)という単語を聞いたことがありますか?
これは、暗号通貨の兄弟分のようなものです。暗号通貨は代替性トークン(FT)ともいい、個別の識別情報を無視して暗号通貨同士や現金の交換を行うのに対し、NFTは個別の識別情報を踏まえて唯一無二なものとして資産価値を与えるものです。
これは、デジタルアートやゲームアイテムなど一点物に対して活用するのに向いていて、たとえコピーされたとしても、データ上で「本物」であることが保証されているので、著作権の保護に大変役に立つ物なわけですね。このNFTが最近注目されて、価値が上がりつつあります。個人的に特に興味深いと感じたのは、NFTの運用には暗号通貨であるETH(イーサリアム)が用いられているということです。ETH、今は規制の影響で価値が下がっていますが、長期的に見ればアツいんじゃないでしょうか!?
次週こそは、私も取引をはじめますので、何卒よろしくお願いいたします。
◆児山将のワンポイントアドバイス
中国はビットコインの7割のマイナーがいるとされており、暗号通貨を左右する大国です。これまで中国はたびたび暗号通貨の規制を行ってきましたが、中国人の知り合いに聞くと「法律は合ってないようなもの」と影響を感じさせないコメントが返ってきていました。事実、マイニング規制は、度々報じられてきていますが、いまだに中国でのマイニングは健在となっています。
しかし、今回はどうも風向きが変わっているようです。マイニングには膨大な電力が必要となりますが、それが他の経済活動にブレーキを掛けているようです。そのため、今回は本格的に規制が行われる可能性が高そうです。
1万円からの損益 プラス・マイナスゼロ
5月28日現在 1万円
5000円分のビットコインを買い!(明治大学 akiさん)
こんにちは。明治大学のakiです。
投資初心者として暗号通貨について知るため、今週は最も時価総額の大きいビットコインを購入しました。元手は1万円からスタートということで、資産の50%にあたる5000円分を購入しました。手持ち資産は、5000円で0.00117655BTCになります。
◆初日の売買を止めた理由
5月24日から取引開始でしたが、24日のチャートでは大まかな値動きとしては上に上がっていましたが、値幅が大きく、売買のタイミングを見計らい25日に持ち越しました。
◆今週の売買タイミング
25日10時40分に前日24日の高値を更新した際の価格に注目しました。その価格を基準に1時間後の価格を比較して、1時間後のほうが低くなった時に、成行注文で買い取引を行いました。
仮想通貨の価値はなぜ生まれるのか?
私たちがふだんの生活で用いる通貨は国が価値を保証して発行される「法定通貨」です。しかし、ビットコインのような暗号通貨はどこかの国が価値を保証してくれるわけではありません。ではなぜ暗号通貨に700万円という価格がつくのでしょうか? 秘密はブロックチェーンにあります。
◆ブロックチェーンとは?
端的に言い表すと、ブロックチェーンはその暗号通貨が本物であるという証明を行う技術のことです。
これだけでは何のことだかさっぱりわからないと思いますが、もう少しお付き合いください。たとえば、私たちは何かモノを購入した時にレシートをもらいます。そこにはお金と商品とを交換した取引の記録が記載されていますよね。現金のような実際に手元に残って数えられる通貨ではレシートなんて。と思うかもしれませんが、暗号通貨ではこのレシートが重要になります。
「Aさんが1ビットコインを購入した」「Bさんが1ビットコインを売った」というような、暗号通貨の売買取引をした情報をずっと貯めていく技術こそがブロックチェーンなのです。
では、これがいったい何の役に立つのでしょうか? 暗号通貨はネット上にしか存在しない通貨です。そのため、悪意ある人が誰かの所持している暗号通貨を騙し取ろうとすると、何がなんだかわからないまま取られてしまうでしょう。ですが、ブロックチェーンによる取引情報の蓄積があれば、「本来の」通貨の持ち主の取引が記録されているため持ち主の手元にちゃんと戻ってくるのです。
今回は暗号資産の価値を支えるブロックチェーンについて注目しました。みなさまの理解の一助になれば幸いです。
◆児山将のワンポイントアドバイス
ビットコインの価値や適正価格に関しては、新興銘柄同様議論が分かれるところでしょう。ビットコインの分析には、マイニングの損益分岐点やハッシュレートから適正値を求めたり、取引高とハッシュレートを掛け合わせるなどのさまざまな方法があります。なかでも有名な分析に、市場に存在する量(ストック)を年間供給量(フロー)で割ることで算出されるストックフローモデル があります。これによると、過去の値動きは分析シナリオに近しくなっており、2021年末には1000万円に達するそうです。
もちろん、このモデルどおりに動くとは限りませんが、大手運用会社や多くの投資家も参考にしていることから、その影響度は高いと考えられます。
保有する暗号通貨 ビットコイン
1万円からの損益 プラス・マイナスゼロ
5月28日現在 1万円
◆ 大学対抗 1万円からはじめる暗号通貨バトルのルール学生投資連合USIC
・元本は1万円です。
・投資する暗号通貨の選定は自由です。ただし、国内で購入できる暗号通貨に限ります。
・レバレッジは、かけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)します。
・元本割れは1回まで。リベンジ(再投資)可能ですが、2度、資産(合計で2万円分)を失った場合は、その時点でリタイアとなります。
・順位は、11月26日時点の運用損益で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/