関西ペイントが抗ウイルス商材の新ブランドを立ち上げ 漆喰塗料活用の卓上ボードや床マット【コロナに勝つ!ニッポンの会社】

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   消臭・防臭効果が知られ、古くから建物の壁に使われてきた漆喰(しっくい)。塗料大手の関西ペイント株式会社が、その性質を生かした漆喰塗料を開発。コロナ禍の2020年、漆喰塗料に新型コロナウイルスの感染力を失わせる効果があることを確認し、新たなビジネスに乗り出した。

   漆喰塗料を活用した抗ウイルス製品の統合ブランド「ANTIVIRUS TECHNOLOGY(アンチウイルステクノロージー)」を立ち上げ、生活用品や防災関連など幅広い分野での展開をスタートした。このブランドを担当している関西ペイント販売株式会社の建築塗料販売本部、岩崎浩行副本部長と桂川有加係長に聞いた。

  • 「ANTIVIRUS TECHNOLOGY」ブランドで急きょ発売した卓上ボード
    「ANTIVIRUS TECHNOLOGY」ブランドで急きょ発売した卓上ボード
  • 「ANTIVIRUS TECHNOLOGY」ブランドで急きょ発売した卓上ボード

塗料以外のコンシューマー市場に初進出

   「しっくい」にちなんで4月9日に立ち上げた「ANTIVIRUS TECHNOLOGY」ブランドは、関西ペイントにとって初の塗料技術を生かした派生商品群ブランドであり、塗料以外の市場への挑戦という。

   商品ラインアップは、机やテーブルに置く間仕切り「抗ウイルス〈置くだけ〉卓上ボード」、階段の手すりやドアノブなどに貼る「接触感染対策テープ」、「接触感染対策シート」、床などに敷く「抗ウイルス〈置くだけ〉マット」、はずしたマスクをしまう「抗ウイルス〈はさむだけ〉マスク」の5種類。いずれも漆喰塗料をコーティングした紙や布を使った商品で、付着したウイルスを短時間で死滅させるため、飲食店などで使われているアクリル板に必要なアルコール消毒は不要だ。

関西ペイント販売の建築塗料販売本部、岩崎浩行副本部長
関西ペイント販売の建築塗料販売本部、岩崎浩行副本部長

   5種類の商品のうち「卓上ボード」は、政府・自治体が飲食店に飛沫防止策を求めた「まん延防止等重点措置」に応じて、2021年4月23日に急きょ発売。「販売先は飲食店をイメージしていたが、実際の注文は企業が多い。飲食店が3に対し、事務所が7の感覚」と、岩崎浩行副本部長は販売状況を説明する。

   桂川有加係長は、「素材はすべてダンボール。用途に合わせてカットして使用することも可能で、また捨てるのも簡単」と、加工や処理が容易であることを強調した。

   ラインアップした商品の一部は、ブランド立ち上げ前から製造・販売しており、岩崎副本部長によると2020年度に一定の売上実績を築いた。それを土台にして「ブランド製品すべてで年間7億円の売り上げを目標にしている」と述べた。

5分間でウイルス99.9%低減

   桂川有加係長によると、関西ペイントが漆喰に注目したのは2006年。「当初から、漆喰が持つ抗菌・抗ウイルス機能について着目していた。一方で左官職人さんの減少、施工工数の多さを解決するべく、簡単に刷毛やローラーで塗装できるよう漆喰を塗料化できないか、との発想から検討を開始し、2008年に漆喰塗料を発売した。当時は抗ウイルス機能よりも注目されていたのが消臭性。室内に塗れば漆喰壁に囲まれた蔵の中と同様に臭いのない空間ができ上がる。顧客にはその点を訴求し、販売を続けてきた」という。

   またこの機能(技術)を建築塗装だけではなく、もっと手軽に使えるようにさまざまな素材(紙、フィルム、繊維など)に塗装可能な塗料タイプも開発すべきであると判断したという。その時期にSARSやMARSなどの感染症も発生し、漆喰塗料がどんなウイルスにも効果があるのかを確認する必要があると考え、長崎大学感染症共同研究拠点の安田二朗教授との共同研究を開始。ノロウイルスのようにアルコール消毒にも耐え得るウイルスやインフルエンザなどのさまざまなウイルスでの評価を実施し、いずれも感染力を低減する力を有することを確認してきた。

   さらには、新型コロナウイルスに対する効果を確認する実験も昨年度に実施。その結果によると、新型コロナウイルスは漆喰塗料の塗膜にと5分間接触すると、わずか5分で99.97%ウイルスの感染力を低下させることが確認できたという。「飛沫をイメージいただけるとわかりやすいが、ウイルスは水分と共に存在する。ウイルスが漆喰に付着するとその水分が漆喰の主成分でアルカリ性を有する消石灰を溶解させ、そのアルカリ性によりウイルスが変形して健康な細胞に侵入(増殖)できなくなる」(岩崎副本部長)

   桂川係長は、

「5分間でウイルスが99.9%低減する素材はほかにはありません」

と胸を張る。

   ちなみに、他の抗ウイルス商材のウイルス感染力を低減する時間は「2時間必要なものが多い」そうだ。

防災グッズの開発に注力

漆喰塗料を塗った素材で組み立てた防災トイレ
漆喰塗料を塗った素材で組み立てた防災トイレ

   こうした強力な漆喰塗料の抗ウイルス性を活用した製品事業として立ち上げたのが、「ANTIVIRUS TECHNOLOGY」ブランドだ。

   コロナ禍のなか、高機能な抗ウイルス商材ブランドとして高い関心を呼び、岩崎副本部長によると、年間8000件ほどだったウェブサイトへの来訪件数が1日1000~2000件に大きく増え、「注目されていることを実感した」と言う。

   なかなか出口が見えないコロナ禍にあって、感染対策商品への関心はなお高い。「ワクチン接種が進むことで新型コロナウイルスは収束に向かうだろうが、変異株は油断できないし、インフルエンザウイルスのようにまた流行を繰り返す可能性もある」と、抗ウイルス商品の需要は「アフターコロナ」になっても見込めると岩崎副本部長はみている。

   なかでも、「一番注目しているのは災害関係」だ。大雨や台風シーズンの季節となり、被災地では避難所が設けられる。衛生面から、また「密」になりがちな避難所では、従来から懸念されていたノロウイルスをはじめ、他の感染症の心配もある。

   岩崎副本部長らがいま取り組んでいるのは、避難所で使われるベッドや簡易トイレ、間仕切り用のパーティションを、漆喰塗料を使った材料でつくることだ。

   消臭効果もある漆喰塗料は避難所では最適で、これらの「防災グッズ」の販売を秋の防災シーズンに向け計画している。また、それに先駆けて現在試作品を準備中で、6月には展示会での紹介や、商品の一つである「漆喰間仕切り」のワクチン接種会場への寄贈も検討している。

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