株価は企業への「評価」です。「将来性」を示す指標ともいわれます。国内外の社会情勢や経済状況など、経営を取り巻く環境に左右されますが、評価が上がれば株価は上がり、評価が悪ければ下がります。それなのに、なぜ就職活動の企業選びに株価が気にならないのでしょうか? 企業分析が就活に役立ち、かつ運用利益を得られる(かもしれません)! あなたが勤めたい企業の将来は明るいですか?
※今季から、学生投資連合USICのみなさんのご協力で、より多くの大学にご参加いただくことができました。
そのトップを切って、学生投資連合USICの代表で慶応義塾大学の八田潤一郎さんが挑みます。「企業分析バトル カブ大学対抗戦」の開幕です。
――「企業分析バトル カブ大学対抗戦」が始まった。その第1回の銘柄選びにあたり、まずは揺れ動く、世界の金融マーケットの分析から入った。
調整色強まる市場
直近では市場の調整色が強まっている。2021年5月初旬~中旬にかけて発表された米国の各経済指標が発端となろう。5月7日の米雇用統計は市場予想に届かず、金融緩和の継続観測から、ハイテク株中心に堅調に推移した。
他方、米国の予想インフレ率の歴史的な高水準に、12日の市場予想を上回る米消費者物価指数CPIも加わり、FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング前倒しの観測から、ハイテク株中心に大幅に調整色が強まるという荒い値動きを展開している。
この流れは世界中のマーケットに引継ぎ、半導体ハイテク株の比率が高い台湾加権指数の暴落は記憶に新しい。日本も例外なく、日経平均株価をはじめ調整が続く。とりわけ、信用倍率が高い銘柄が多く、急速な調整は追証による負のスパイラル入りの可能性がある、マザーズといった新興市場の下げが目立つ。これらの一連の流れは中長期的なインフレ懸念とまとめられる。
インフレ抑制のためにFRBの動きがあるのか、各種経済指標や連動する長期金利に敏感に反応する相場が続きそうだ。このような積極的ポジションが取りづらい状況下で、どのように銘柄選びをしていけばよいのか考える。
◆相場サイクル
一つ目の切り口は相場のサイクルで、上の図1のように4つの相場を循環するといわれる。コロナショックを境に大規模な金融緩和を行ったのはいうまでもなく、金融相場といえる。金余り相場ともいわれ、株式市場に大量のお金が流れ、株高を招く。
一方で直近の各企業の決算、ガイダンスを見る限り、実体経済の回復に伴って、業績の大幅な改善がみられることから業績相場でもある。そして今回のインフレ懸念は金融引き締めにより逆金融相場に突入し、株式市場から資金が流出、株安を招くことを念頭に置いた調整だ。
このまま本格的に逆金融相場入りするのか、足元の企業業績が評価され再び上昇に転じるのかはわからない。
ただ、金融緩和の効果はみられ、金融相場の終焉が近いようにみえる。ならば、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が高いハイテクグロース株よりもバリュー株優位の動きが続きそうだ。
具体的にはインフレに伴って長期金利が上昇するのであれば、国債利回りよりも配当利回りが十分に高く、金利上昇の影響が少ない財務体質良好な、足元の景気回復効果を享受できる景気敏感株をあげられる。
サプライチェーンとコモディティ市況
二つ目の切り口はサプライチェーンで、川の流れを例に、3つに分かれるといわれる。商品の原料となる資源や素材を扱う「川上産業」、それらをもとに部品や加工物をつくる「川中産業」、部品をもとに商品に完成させ、消費者に届ける「川下産業」だ。
インフレの影響を受ける、エネルギー、金属や穀物など多数の商品で構成されるCRB指数も堅調に推移し、コモディティ・スーパーサイクル到来などという声も出てきた。特に世界景気を反映することから、「Dr.Copper」の異名を有する銅が、脱炭素需要なども相まって史上最高値を更新している。
加工貿易を行う日本にとって、商品の価格上昇は原料高を招き、多大な影響を及ぼす。そこで、注目したいのが川上産業だ。資源の生産権益を持つ商社系は勿論だが、原材料高騰はあるものの市況価格に合わせて売ることができる素材や化学メーカーを含めた、川上産業全体に注目だ。
これらのことから、世界のマーケットは価格調整局面だが、「川上産業」「景気敏感」「高配当」「バリュー」銘柄を選びたい。
注目したのは、非鉄金属・鋼、プラスチック材料の金属専門商社の「白銅」(7637)。
● 川上産業:非鉄金属を中心とする金属商社であり、各産業界に納入している。
● 景気敏感:2021年3月10日「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」に記載のとおり、「半導体需要増を背景に半導体製造装置市場の拡大および原材料市況の上昇により、前回予想を上回る見通しとなった」ということからもわかる。
● 高配当:前出の業績予想の修正に合わせて、配当も増額している。今後も景気改善、コモディティ価格上昇にともなって、業績が上振れるならば、過去の配当推移を加味して大きく増額の余地がある。
● バリュー:他の商社同様、割高感はなく、今後も業績改善が進むという前提に立てば、このバリュエーションで見直し買いが入っても、不思議はない。
したがって、業績修正とコモディティ市況を手掛かりに、決算日である5月14日始値1708円で100株購入した。
白銅(7637)
年初来高値(2021年5月10日) 1850円
年初来安値(2021年2月19日) 1359円
株式取得時の株価(2021年5月14日) 1708円
取得株数 100株
◆企業分析バトル カブ大学対抗戦のルール
・月額200万円を投資金額の上限とするバーチャル投資です。
・投資対象は新興市場を含む、国内の上場企業の現物取引です。
・運用期限は最長で6か月。銘柄選定の最終月は10月になります。
・順位は11月末時点で、投資した銘柄(企業)の売買や配当で得た収益の騰落率で決めます。
小学生の時に株式投資を始め、アベノミクス相場で大きく資産を増やすも、2015、16年のチャイナショック、18、19年の米中貿易摩擦を経て、機関投資家や地合いの影響を比較的受けにくいニッチな小型銘柄の長期投資にシフト。20年のコロナショックで分散投資とリスクヘッジの重要性を認識し、FX、不動産、暗号通貨、コモディティ、デリバティブを新たに運用しながら、毎日勉強中。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資の「楽しさ」を多くの人に知ってほしいと願う。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に、全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
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