トヨタ、JR東日本、日本航空らが手を挙げたが...
企業に「自治体に迷惑がかからない範囲で、自前で医師を調達しろ」とか「地域住民にも開放して接種させろ」と要請しているのだ。さすがに、地域住民に開放する件は、セキュリティの問題もあり、受け入れる企業は少なくなりそうだ。
さて、「とりあえず手が挙がるのを待ちたい」という河野太郎氏の願望に応じる企業はいるのだろうか。
主要メディアの報道をまとめると、トヨタ自動車が6月1日、実施を検討していると表明。JR東日本、日本航空、住友生命保険、楽天グループなども準備を進めると明らかにした。
また、貸会議室大手TKP(ティーケーピー)が、運営する約250拠点を職場接種の会場として企業に無償提供すると発表。あいおいニッセイ同和損害保険も、本社の隣接施設「センチュリーホール」(東京・恵比寿)を、地元企業の職場接種の会場に提供することを検討している。
このうち、トヨタとJR東日本は直営の病院を持っているだけに、医療スタッフの確保には事欠かないとみられる。なかでも、日本最大のメーカーで、子会社を含む従業員が約36万人(2020年3月末時点)に上るトヨタが実施に踏み切れば、追随する企業も出てきそうだ。トヨタは、地元自治体の集団接種の場でも全面的に協力してきた。
朝日新聞(6月2日付)「職場接種、対応急ぐ企業」で、こう伝える。
「『企業城下町』では、企業と自治体が一体となった取り組みがすでに始まっている。トヨタ自動車は、地元の愛知県豊田市の集団接種の運営に参加。作業のムダを省く『トヨタ生産方式』を生かしている。接種の作業にかかる時間をトヨタ社員が計測。『手指消毒12秒』『上着を脱ぐのに30秒』などと確認し、接種を受ける人が滞留しにくい導線を設計した。集団接種が5月下旬に始まってからも、来場者に受付書類をカバンから事前に出してもらうよう呼び掛ける『カイゼン』を進める」
トヨタは、生産現場で生かしてきた効率重視のシステムを、ワクチン接種の場でも惜しみなく地元の人々に提供しているのだ。朝日新聞はこう続ける。
「豊田市にはトヨタ社員やその家族が大勢住む。『集団接種が進めば、職域接種が実質的に進む』と、トヨタ広報は話す。トヨタは、集団接種とは別に職域接種も実施する方針。会場や方法などは検討中としている」
トヨタは、ほかの企業が嫌がる地元住民の開放も目指すらしい。
(福田和郎)