パナソニックは解体するのか?
「週刊ダイヤモンド」(2021年6月5日号)は、「パナソニック 名門電機の解体」というショッキングな見出しを掲げた特集を組んでいる。「解体」とは何を意味するのか。
パナソニックは来年4月の持ち株会社体制移行を踏まえ、今年10月に組織改編を実施する。6月末に就任する楠見雄規次期社長体制が始動するのだ。
21年3月期決算で売上高は7兆円の大台を切り、純利益は1651億円と、ソニーグループのわずか7分の1にとどまった。津賀一宏社長の失政を指摘している。
組織改編では、4つの主要事業会社と3つの問題事業会社に分類され、「自主責任経営」が求められる。そして、「津賀氏以上に合理的で冷徹といわれる楠見氏ならば、解体も辞さずに事業会社の自主責任経営を徹底することだろう。事業の身売り・撤退が加速しそうだ」と書いている。
テレビ・デジタルカメラが主軸の黒物家電事業とハウジング事業、航空機内AV機器事業、車載機器事業などが対象と見ている。
また、「自主責任経営」という表テーマのほかに、裏テーマである「呪縛の撲滅」も組織改編の狙いだという。パナソニックの「呪縛」とは何か?
事業部の縦割り、内向き志向の組織、人事の硬直化だと指摘している。そして、最大の事業会社となるパナソニック株式会社の社長など、幹部人事の刷新が、手っ取り早い「呪縛の撲滅」だとしている。
パート2では、旧態依然とした組織・制度が残る白物家電部門は、パナソニックの「伏魔殿」として、その「解体」を取り上げている。そのカギになりそうなのが、世界最大のサプライチェーンソフトウェア企業である米ブルーヨンダーの買収だ。総額71億ドル(約7700億円)とパナソニックにとって過去最大級の買収となった。「ハード傾注体質」という名の病巣に本気で切り込もうとしている、と見ている。
車載機器を担当する「自動車事業会社」の劣勢を挽回する秘策として、「テスラ電池」を分社して上場させる方法を提案している。そのタイミングは今しかない、とも。
また、パナソニックとトヨタ自動車が住宅・電池事業の合弁会社を作ったが、問題事業の押し付けにトヨタが激怒している、と書いている。そして、パナソニックは住宅の「借り」を車載電池事業で「返す」ことになると予想している。
このほか、ソニーや日立との「事業再編度」に格差があることや、特許の出願件数で「将来の飯の種」である技術的な基盤づくりで劣勢にあることを指摘している。
巨大企業、パナソニックで今何が起ころうとしているのか、さまざまな角度から迫っている内容だ。
特集2は「課長は理解必須! キャッシュフロー・マネジメント術」。矢部謙介・中京大学教授が、授業形式で解説している。「利益の出し方」が一発で分かる図があった!、製造業にありがちな「作るほど儲かる」の罠? など、実践的な内容だ。「その事業はキャッシュという観点から見て、自社の身の丈に合ったものなのかどうか」を検討するようにと、矢部教授は結んでいる。